コスタビクトリア チャータークルーズ(5)旅情編
クルーズ船に乗ると船内の食事や催し物を楽しむだけでなく、他の旅では経験できない事を見聞きできるのが楽しい。多くの乗客が見守る中のパイロット上下船などもそうだし、大きな橋の下を本船が煙突やマストすれすれにくぐる際のちょとしたスリルも船旅だけの醍醐味だろう。その他、外国船に乗った時にはタグボートなしスラスターだけで入出港する操船に感心するもので、今回のコスタ・ビクトリアも各港でタグが1隻だけ形ばかりに見守るだけだった。日本船が世界中どこでもタグを使うのに対して、本船ではタグボートにロープ(ホーサー)を渡す事もなく、このあたりの操船の巧みさに彼我の安全に対する考え方の違いを感じてしまう。銀行員だった妻は「日本の銀行は一日の業務を終了するときに1円でも違うと合うまでチェックし直すのに、外国の銀行は僅かな誤差なら雑勘定として処理する事があるらしい」と完璧を求める日本の国民性に言及する。
入出港といえばロッテルダムでは木靴を履いた男性合唱団の送迎が素晴らしかったし、スコットランドではあちこちでバグパイプの演奏があって、世界中どこでもクルーズ船には地元の歓待があって嬉しいものだ。航空機の旅はセキュリティの為にゲートまで送迎できなくなったし、鉄道でも窓を開けて発車まで別れを惜しむという光景を見なくなり、今や船の旅だけが旅情を掻き立てる唯一の交通手段になってしまったようだ。なにしろひとたびクルーズ船が訪れれば数百人から二千人もの観光客が一度に観光や買い物をするのだから、地元が送迎の行事に熱心になるというのも道理である。今回も大型船が着ける岸壁を持たない鳥羽では、コスタビクトリア号出港時に、鳥羽の観光船”龍宮城”に地元の人が大勢乗って湾の出口まで本船を見送りにきてくれた。
”龍宮城”の船上で見送ってくれた人たちが振っているのは、鳥羽で真珠の養殖に成功した御木本幸吉ゆかりの赤いハンカチで、それがビクトリア号に併走していつまでも夕風になびいている光景は印象的である。そういえば9年ほど前に”にっぽん丸”でここに来た時も、もう一隻の観光船”フラワーマーメイド”から同じような見送りを受けたから、変わらず鳥羽の町はクルーズ船を歓待してくれるのだろう。コスタビクトリアの出港時、おりしも鳥羽港に入ってくる伊勢湾フェりー”伊勢丸”がマストにUW旗を掲げ、長声3発の「いってらっしゃい、ご安航を祈る」と汽笛をならすと、本船が長声3発の答礼を返したのは他の交通機関では味わえない旅情満点の情景であった。クルーズっていいものだ。
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トップの写真は長崎港の女神橋通過でしょうか?賑やかな空気が伝わってきます。
いつも楽しく拝見させていただいています。
さて、奥様の世界一周乗船記を楽しみに待っているのですが・・・・お忙しいとは思いますが、よろしくお伝えください。
本当に生き生きとした臨場感あふれる表現には一緒に乗船し食事をしている気分になります。荒れる海ではこちらが船酔いしそうな気分にもなります。
投稿: 健ちゃん | 2013年5月15日 (水) 15時02分
健ちゃんさん、
コメントありがとうございます。おっしゃる通り写真は長崎の女神大橋です。初めての通過でしたが橋の上から何人もの人が手を振ってくれました。
妻は世界一周を中断して、前年に乗ったウエステルダムのアップに尽力しております。なにぶん筆が遅いので、もっと集中しろと尻をたたいているところです。
投稿: バルクキャリアー(ブログ主) | 2013年5月15日 (水) 20時41分
すっ、すみません。頑張ります。
あの、今日の実習で担当したプードルの呼び名が偶然「健ちゃん」だったので、これも何かのご縁かと必死ブースターに点火しました。
投稿: 遅筆女子 | 2013年5月15日 (水) 20時42分
コスタのファンネル(この船は黄色と3つの形が特に好き)と真っ青な空に感動!!昨日、ボイジャーから戻って来ました。人の繋がり、出会いが何よりも船旅は楽しかったです。この先、旧船友達と予定してる飛鳥2に乗船するのが苦痛になってきました(笑)70年代ダンスパーティー最高♪
投稿: リン | 2013年5月16日 (木) 08時56分
りんさん
こんにちは。クルーズ三昧の日々、うらやましいです。ボイジャーも人によっては不満がある様ですが、いかがでしたか?
飛鳥Ⅱはじめ日本船はやはり最高のサービスだと思います、ただ値段が・・・・。
投稿: バルクキャリアー | 2013年5月16日 (木) 20時52分
簡潔明瞭で馴染みやすいブログ更新を楽しみにしてます。たまたま本日「コスタビクトリアが神戸港はポートターミナルに寄港したのを見てきたので、再度コスタ乗船記を読み直しました。今回もH.I.S
日本一周+済州島10日間クルーズで神戸で300名乗船後、夕刻済州等向け出港するそうです。小生は商船学校卒で短い年数だったが、機関士として世界一周航路をした経験があり、船が好きで大阪・神戸港に入港する客船・帆船の撮影によく出かけてます。これからも奥さんのブログも一緒に覗かせてもらいますので宜しくお願いします。
投稿: no-mu | 2013年9月 8日 (日) 15時59分
no-muさん
コメントありがとうございます。プロのエンジニアの方にコメント頂けるのは光栄です。
エンジンや様々な機器類が順調に稼動してこその安全なクルーズがあると乗船の度に感じております。
最近は環境規制、減速航海、カプチーノバンカー問題など一層機関部の仕事が大変になってきたのではないでしょうか。
今後ともコメントやご批評をお待ちします。
投稿: バルクキャリアー(ブログ主) | 2013年9月 8日 (日) 20時23分