箱根登山鉄道
もみじ狩りに妻と箱根へ行った。歳をとってくると元来のせっかちにますます拍車がかかり、三連休の道路渋滞がうんざりとあって、何十年ぶりかで箱根湯本行きの小田急ロマンスカーで行く事にする。久しぶりのロマンスカーに乗車し新宿を出て間もなく缶ビールの蓋をプッシューと空けると、いつもの小田急のホームを横目にたちまち非日常の世界が始まって「これぞ正しい旅の姿です」とうきうき。あっという間に着いた小田原からはいよいよ箱根登山鉄道にロマンスカーが乗り入れるので車窓を眺めていると、かつては標準軌間(1435ミリ)の登山電車と狭軌(1067ミリ)の小田急が線路を共有して3軌条だったはずが、いつの間にか小田原・箱根湯本間は1067ミリだけの線路になっている。それも新宿から来た電車で湯本に直行するのはロマンスカーばかりで、小田急の通勤車両はすべて小田原止まりとあって、ちょっと来ない間に運転方法もすっかり変わるものだとびっくりである。
昨日はゆっくりと強羅で温泉に浸かり、今朝は観光客で込む前に一足は早く帰京しようと、強羅の駅で湯本に下る登山電車を待っていると、ゴトゴトとやって来た車両が最古参の100形。小田急の名特急SE車由来のバーミリオンオレンジの塗装も美しく、内部はロング・シートに近代的改装されているものの、無骨な外観から吊りかけ駆動の重厚なサウンドを轟かせながら山を下るのかとワクワクしながら乗り込んだところ、この車両、強羅駅を発車すると床下から響いて来るのはカルダンドライブの軽やかなサウンドで思わずずっこける。さすがにコンプレッサーは旧型らしく”ヌカヌカヌカヌカ、プッシュゥー”と懐かしい音をたてながら圧縮空気を作っているのがわずかな救いで、例によって群がる子供達を蹴散らしつつ、大人気なく運転台後ろの”かぶりつき”で電車の運転を見学したのだった。
車掌の車内放送によると、箱根登山鉄道は何と80パーミル(1000米進むうち80米登る)の勾配だそうで、これはケーブルカーやアプト式によらない粘着運転方式(要するに普通の電車と同じ走り方)では日本最高の傾斜、世界でも第2位だと云うから、どうやって抑速しながら安全に山を下るのか興味津々である。強羅を出て間もなく、電車は下り勾配に入ってもブレーキシリンダーの圧力計がまったく動かないまま速度25キロほどをキープしているから、モーターで発電する事によってブレーキをかけている様で、運転台左上の電流計を見ると針がはっきりと動いているのが判る。どうやら主幹制御機(マスコン)ハンドルの左側ノッチが力行(加速)で「切」をはさんで右側ノッチが発電ブレーキノッチの様で、運転士が力行と発電ブレーキのノッチを微妙にあやつり急勾配や急カーブを乗り越えていくのを見るのが楽しい。3箇所のスイッチバックを通って、あっという間に終点の湯本に到着した時には「やっぱり列車の旅はクルマと違って楽しいものだね」と妻と頷きあっていたのだった。それにしてもこの登山電車、急勾配にも拘らず大きな事故もなく永い間運転しているのは凄いものである。鉄道の旅もまた良しである。
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100系、というのですね。何度か乗車したことがあるのですが、ベビーカーと一緒に乗車する時、あの段差がどうも苦手で、ホームで待っている時にあのオレンジ色が見えると、あれか…と憂鬱になっていました。 そんなに愛されていたとは!
投稿: いいね! Y | 2012年11月26日 (月) 22時27分
いいね!Yさん
そうか、視点を変えるとまた違った評価になるのですね。参考になりました。
こちらも一足早く段差などが気になる世代になってきますから。
投稿: バルクキャリアー | 2012年11月26日 (月) 23時19分