プリンセスクルーズに日本船が無体な反対
郵船クルーズや商船三井客船も加盟する日本外航客船協会が、米国プリンセスクルーズが来春に実施する日本発着・日本人マーケット向け本格的クルーズに対し、それらはカボタージュ規制に抵触するとして国土交通省に要望書を提出したと業界紙に報じられている。すでに発表されている通り、クルーズジャイアントの米カーニバル社は、日本法人カーニバル・ジャパンを設立し、来春に傘下のプリンセス所属7万7千トンの”サン・プリンセス”(バミューダ籍)を投入して、日本を中心に9航海のクルーズを展開するとしている。当ブログでもアップしたが、プレミアムクラス大型船である”サン・プリンセス”が来れば、日本のクルーズ客船に比べて大幅割安な価格で我が市場でクルーズが楽しめる事になり、ファンとしてはその行方を大いに期待しているのである。
要望書では、”サン・プリンセス”の運航スケジュールは日本人向けであり、韓国や中国に一時寄港するにしても、外国籍船が日本各港でショア・エクスカーション(オプショナルツアー)を日本人向けに提供する事は、船舶法第3条に規定するカボタージュ規制違反である、と言うものらしい。という事で私もさっそく船舶法第3条を読んでみると「日本船舶に非ざれば・・・・・・・・日本各港の間に於いて物品または旅客の運送を為す事を得ず、ただし・・・・・・・・・国土交通大臣の特許を得たる時は此の限りにあらず」と記されている。
郵船の客船管掌の副社長が述べていた様に(4月28日付け当ブログ)、プリンセスの本格的な日本進出は邦船にとって相当の脅威である様だが、それにしても邦船各社もケツの穴の小さい要望書を国土交通省に出したものだ。かつてアメリカはジョーンズ法でカボタージュを厳しく規制しており、アラスカクルーズの客船はカナダのバンクーバーを発着港にしていたのが、最近はカナダのビクトリアに数時間滞在するだけで、外国籍船がシアトル発着のアラスカクルーズに就航しており、地元経済を大いに潤している事は広く知られている通りである。今回の日本外航客船協会の要望書提出は、これら世界の趨勢に逆行する椿事と言って良いのではなかろうか。
日ごろ「海運の自由の原則、世界単一市場」などと海運会社は豪語しているくせに、その子会社が「たった一杯の外国船で夜も眠れず」のお上頼みとは、なんともだらしない業界かと噴飯ものである。いくらかゆい処に手が届く日本船のサービスと言っても、船齢が20年を超えるウバ桜船に法外な金額を払わなければならないのがわが国の現状だ。プリンセスの日本上陸は此の体制に風穴をあけるものと、クルーズ客は楽しみにしていただけに実に残念な要望書提出である。一昨年から日本市場に乗り込んだ”レジェンド・オブ・ザ・シーズ”は日本国内各港でエクスカーションしなかったから、お目こぼしに預かったとしたら、何とも”形式的”な要望書提出ともいえる。
こうなれば、国土交通省はこんな要望書を一蹴し、米国クルーズ事業が日本で展開する事もTPPの議題にのせると共に、公正取引委員会は邦船の横並び・高価格体質が自由競争への脅威で、消費者の選択の自由を奪うものだと乗り出したらいかがだろう。「邦船も好き外国船も好き」と云う私の様なクルーズファンとしては、つまらない要望書など引っ込め、自ら高コスト体質を改め、堂々と外国船と競争して日本船が安く強くなって欲しいのである。日本国内で途中上下船せず、外国に寄港するクルーズならば、国内港ツアーを企画しようと否と、外国船でクルーズを展開できる、と云うのが世界標準のはずである。
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日本外航客船協会の要望書提出にはまったく呆れています。
一時的に外国船を阻止したとしても、それで日本船の利用者が増えるとかいうことはないとおもいます。
投稿: guy92 | 2012年5月11日 (金) 22時46分
guy92さん、お久しぶりです。
コメントありがとうございます。
日本船も良いです。が、日本から気軽に乗船しようと思った時に、ほとんどそれしか選択肢がないと云う状況は、ほとほと困ったものです。そしてそこにあぐらをかき、ガラパゴス的進化を続ける日本船には、是非とも競争が必要だと思います
投稿: バルクキャリアー | 2012年5月11日 (金) 23時23分