太平洋フェリー「いしかり」
連休の後半は、北海道の桜を見に行こうと名古屋から仙台経由、苫小牧行き(2泊)の太平洋フェリー”いしかり”に乗船している。5年前にフェリー・オブ・ザ・イヤー(当時)に輝く”きそ”で、同じ区間を乗船(妻の乗船記「太平洋フェリー きそ 名古屋~苫小牧乗船記(2007年4月27日~4月29日)」)したが、姉妹船の”いしかり”が昨年代替デビューしたので、さっそく新造船の乗り心地を体験しようという目論見だ。新幹線で名古屋まで行って乗船した”いしかり”の行く手、太平洋はあいにくの低気圧によって3米~4米の大きなうねり。それでもスタビライザーの効果か乗り心地は良く、エンジンの振動もさして気にならないのは最新の技術の賜物だろう。
”にっぽん丸”より大きい長さ200米の船体に、乗客定員700人という事だが、例によってフェリー特有の雑魚寝部屋や寝台室、窓なしキャビンもあるから、その分上級キャビンは一部屋あたりの面積が広く、廊下やパブリックスペースもクルーズ客船よりはるかにゆったりした造りである。ゴールデンウイークという事でほぼ満船状態だが、大浴場も含めて船内が混んでいると云う印象がまったくなく、乗客がゆったり過ごしているのがとても心地良い。
船内のデザイン・モチーフは”きそ”のタヒチに対し本船はエーゲ海と云う事で、装飾はそれなりにギリシャ調なのだが、”にっぽん丸”と同じ三菱重工・下関の建造なのに、デザインはどうも垢抜けない。特にエーゲ海の白い家を模して白や薄い色を船内に多用しているのだが、薄クリーム色のカーペットなどは食べ物や飲み物のしみが目立ち、「これが就航一年の船なのか」というくらい汚れているのはがっかりである。クルーズ客船と違って給仕や掃除専門の外国人クルーが雇用できないので仕方ないが、せっかく白と青が基調のアコモデーションなのに掃除が行き届かない点は何とかならないものか。
また上部デッキには椅子やカウチの類が一切ないのは、デッキで寛ぐ事をハナから考えていないのだろうか。せっかくこれほどの船体なのだから、少なくとも一部に木張り(または木目調)の遊歩回廊を設け、夏にはデッキでお茶を飲めるくらいの設備が欲しいと考えてしまう。特に東北大震災の津波以降、途中の仙台港は緊急津波警報に備え3時間余の停泊時間に船外へ外出する事が禁止になったから、余計に空いた時間にデッキでゆったりしたいものだが、それもままならないのは残念である。
それでもバス・トイレ付き、にっぽん丸のデラックスルーム以上の広さの特等洋室で、朝夕食を入れて2泊で34000円(一人)くらい、のんびりゆったり海を眺めながら北海道に航海するのは快適である。乗船するとアクティビティ一杯の客船より、ゆったり時間が流れるのも珠には良いもので、ラウンジでのピアノ演奏などを聞きながら、持参の長編推理小説を読み切ってしまった。一般的に云って長距離フェリーの乗務員は接客態度が良く、きびきび一生懸命働くが、その対応を見ているのは頼もしいし、今回の様な繁忙期でなければ早割りなどで料金は約半額との事で、時間が出来た団塊・退職世代などには、北海道旅行にお勧めの航路と云えよう。
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