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2012年1月18日 (水)

コスタ・コンコルディアの事故(2)

コスタ・コンコルディアの事故では、その後の報道で当夜に何が起こったのかが段々分かる様になってきた。船長があるクルーの為に意図的に島に近寄るコースを採ったとされているから、自動操舵や電子海図の問題ではなく、単に見張り不十分で島に近づき過ぎた事が原因の様だ。もっとも客船は最短航路を航行する事が要求される貨物船やフェリーでないから、島に近寄って航海してもそれが特別に問題とはいえない。

この点では「航路を逸脱した」とか「島に近寄ってサービスする事が常態化していた」のが問題だとする評論家のコメントがメディアに散見されるが、そもそもクルーズは物見遊山の船だから航路を離脱するのも仕事のうち、浦賀水道航路や備讃瀬戸航路を航行する様に法律に則って決められた航路を進むのとは訳が違う。ただし通常の航路を逸れて岸に近寄る選択をするならば、浅所と自船の位置確認は最も重要な船の仕事であると言えよう。

ジリオ島に近寄る航路をとった場合には沿岸航法の常として灯台や目標の灯火を確認しながら、レーダーや場合に依ってはエコー・サウンダーで常に自船の位置を把握する必要があるが、クルーズ船がこのコースを航行するのが特別な事でないなら、この船の船長はさして注意も払わずに自船の位置を誤認して悲劇に至ったのたであろう。私はむしろ船体に破孔が生じてからの船長の判断が、今回の事故のポイントだと思っている。機関室に浸水があったとされているが、ブリッジでは発電機の稼動状況もモニターできるし、現場のエンジニアーからの報告もあったに違いないのに、結果として避難前に推進力を喪失し座礁して最悪の結果になった様である。

ジリオ島の港はごくローカルな設備で、全長290米かつ喫水9米に達する大型船が安全に避難できる規模や設備はないだろう。地元を知ったる船長ならば、そんな港に近寄るよりは当夜は気象・海象も悪くなかったのだから港の沖で錨を打って、船体が大傾斜する前に救命ボートを繰り出せば被害者ももっと少なかったに違いない。どうもこの船長はさっさと船を離れた事などから、事態を軽く見て適切な手を打つ事が苦手なタイプで、船長の資格があったのか疑わしいと感じる。これがイタリア人気質なのかもしれないが、コスタ・クルーズも大カーニバル・エンパイアの傘下となっているのだから、キュナードやP&O、ホーランド・アメリカなどから相応しい船長やクルーの供給を受けてはどうなのだろうか?

飛鳥Ⅱブリッジの発電機モニター
20120118


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船・船旅」カテゴリの記事

コメント

こんばんは、
今回の事故、私も同じ意見を持っています。
気質なのか社風なのか、COSTAの事故は多すぎると思います。
地元の海での気の緩みでしょうか。

ぽんぽこりんさん、

今晩は。最近は外国船でシーマンシップを持った船乗りが少なくなった様に思っていました。この事故で案の定という感じがしています。もう一度、シーマンシップが問い直されていると思います。

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