コスタ・コンコルディアの事故
イタリアの大型クルーズ船”コスタ・コンコルディア”の事故が朝からテレビのニュースで流されているが、この2日間報道を見ていて様々な疑問が湧いてきた。それを列挙してみたい。
- YoutubeにアップされているAIS航跡から、本船はジリオ島の南あたりからコースを転じて急に島に接近を始めている様だ。そのコースは船長のプランであったとUSA TODAYのウエブ版で報じられている。事故は夜の9時頃に発生しているのでジリオ島に接近しても、島の景色を楽しめる訳ではないし、さして距離の短縮にはならないはずである。本船は何故その様なコースをとったのか。
- 船長は晩餐中でなくブリッジに居たとされるが本当か?見張りは適正であったか?
- 現場の様な水道では通常は自動操舵を使わないと考えられるが、仮に自動であったとすると気象・海象の変化で船位が予定したコースに乗らない場合に手動で適当な修正を行ったのか。
- 電子海図に依って操船していたと想定すると、コースを逸脱した際のアラーム設定などインプットに間違いがなかったか。
- 避難訓練は、乗船24時間以内に行う規定だそうだが、それが妥当なのか。
- 島に近寄りすぎて岩礁にぶつかり、船体に破孔ができたと思われる直後に、多くの乗客が船内電気が消えたと云う。ところが座礁後の報道写真では本船はライトを点けて救助を待っているが、機関室のディーゼル発電機はどの程度損傷したのか。岩にぶつかった後、機関室に浸水があったのか。
- 6基のディーゼル発電機で作られた電気で本船は推進力を得るが、事故から座礁に至るまでどの程度推進力が確保されていたのか。救助の為に島に近づこうとしたと報道されているが、動力が失われようとする船舶でそれは妥当な判断であったか。
- 島に近づいたのは船舶の輻輳水域から離れるとか、風や潮流の影響を島影で避ける事なども理由として考えられるが、現場はそれほど頻繁に他船が往来する海域でもない様だし、強風や大きなうねりなどもなかった様だ。なぜ岩に接触した後、安全な沖で救助を待たなかったのか。浸水がひどかったのか。
- 座礁して横転した写真からはフィン・スタビライザーが展開されたままであるのが判る。座礁せんとする時にスタビライザーが出たままなのは何か理由があるのか。
- 船長がいち早く本船を離れたり、乗客への適切な説明・指示・誘導がなかったのは何故か。
いずれにしても、VDR(ブラックボックス)やログブックの解析、クルーや乗客への聴取などで真相を究明してもらいたい。それしてもイタリアと云えば古くからの海運国であり、今でも多くの船会社がある。その一角で乗客を置き去りにしてイタリア人船長が避難したのならば、その伝統に傷がつくと云うものだ。ドイツ人が良く云う「いつの日かまたドイツと日本で組んで世界を制覇しような、ただし今度はイタリア抜きでな」と云うジョークが今日は妙にリアルに思い出される。
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乗ってなくて良かったですね。それにしたも信じられないことがあるものですね!
投稿: MT | 2012年1月17日 (火) 08時49分