西武新宿線脱線事故
昨年の事は遠い過去の様に感ずるのだが、つい一週間前のクリスマス・イブの夜には、西武新宿線の東村山駅でおきた西武園発・新宿行きの電車脱線事故が報道された。事故は最新鋭20000系8両編成の7両目(モハ車)でおき、これまでの発表では線路への置石や速度超過が原因ではないとされている。幸い怪我人などは出なかったが、毎日、何百本の列車に何万人もの人が何事もなく現場を通過し、車両や設備・保線などに相応のコストや注意が払われていた大手私鉄でも、ハードに潜在する原因で脱線事故が起きると云う事を思い起こさねばならない。
東村山駅の脱線事故現場を写真や地図で見ると、西武園駅から支線を走って来た新宿行き電車が、下り(副)本線をポイントで跨いで上り(副)本線の駅ホームに入ろうと云う箇所の様だ。複雑な線路配置の中で電車が減速中、かつ乗客も少なく軽い車両状態で起こった事故であるから、ちょうど2000年に起きた日比谷線・中目黒の脱線事故を思い起こさせる。日比谷線事故で原因とされた「輪重のアンバランス」で西武線でも車輪が線路に乗り上げ脱線したのかもしれないが、その他レールと線路の摩擦とかブレーキ作動の問題、ボルスタレス台車の是非など色々な事が今後の調査で解明される事だろう。
国交省の運輸安全委員会のホームページには早速この事故が調査中として掲載されているが、この機会に改めてこのページを見ると、昨年だけでも我が国では12件もの脱線事故が起きている事を知り驚くのである。これまでに掲載された綿密な調査報告書を読むと、安全な乗り物とされる鉄道でも、その安全運転の為には過去の蓄積が充分活かされている一方、事故がその盲点を突いてやってくるのも解るのである。そんな中で西武線事故を念頭に描きつつ、最近の事故調査報告書を読むと、2009年に大阪・吹田信号所で起きた貨物列車脱線事故が停車直前の低速脱線事故としてなかなか興味深かった。
この事故は大阪吹田信号所に入線する25両編成の貨物列車の空の9両目で起こった脱線事故だが、前方信号が停止現示の場合にATSの確認ボタンを押した際、一定の条件の下では非常ブレーキが全列車にかかってしまうという電気的なソフトの問題が事故の誘因であった。加えて貨物列車のアナログな空気ブレーキの特性で、前から順に非常ブレーキが掛かって前部が停止しようとするに対し、ブレーキがまだ作用しない後続車両が慣性で前車両を突き上げた為に、軽い9両目が浮き上がって脱線したと云う。鉄道と云うシステムは最新のテクノロジーで成り立っている一方、昔ながらの部分も残っていて、未だにちょっとした事で脱線事故などが起こるという微妙なものでもある。こういう一面がシステムとしての鉄道をより興味深くさせるのだが、今回の西武線事故の調査からは、また脱線に対する新しい安全対策を見出して欲しいものである。
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