TPPの構図
日経新聞を読んでいたら「経済教室」に面白い分析記事が載っていた。早稲田大学の久米・河野という二教授の調査チームが、「TPPを巡る政治対立の構図」としてこの協定参加に賛否を示す人々が、それぞれ普段どういう考え方をしているのかを探ったものである。私から見ればTPPに参加しない選択肢などありえないのだが、「これにより国内の農業は壊滅する」に始まり、「医療保険制度が崩壊する」から「アメリカの陰謀」説まで、よくもこれだけ出鱈目なプロパガンダが反対派から出されると驚いていたので、この記事に引きこまれてしまった。
思いだしてみれば、ガットのウルグアイラウンドの際「米を一粒も輸入させない」として関税化を拒み、ミニマムアクセスによって輸入された無駄な米が倉庫に積み上がりつつ、国内での稲作は減反につぐ減反で一向に競争力などは向上しなかった。農業政策などは戦後一貫して失敗の連続なのに、これを反省する事もなく、ぞろ外国脅威論を持ち出す農協や農水族の厚顔には呆れるばかりなのだが、彼らには一体どのくらいの補助金を与えれば、国民の生活を支える産業として自立する事が可能になるのだろうか。問題はTPPなどではなく「内なるもの」だと私は考える事にしているのである。
などと思っていたら、この2教授の調査チームが面白い分析を発表している。まず「社会福祉など政府のサービスが悪くなるとしても、小さな政府の方が良い」と考え、新自由主義的路線を奉じる人ほどTPP参加を支持する傾向が強く、米作農家や中小企業が影響を受けるのではと心配する人ほど反対の傾向が強いと云う。さらに中国の脅威をわが国が感じると考える人ほど参加する事に肯定的なのに対し、日本がTPPに参加する事で米国が得をすると思う人ほど否定的だそうである。調査チームは「TPPを巡る争いが国内の利害対立だけでなく、日本の対外政策のビジョンと不可分」であるが故に「国論を二分する論争が繰り広げられている」としている。
さて、私はずぶの素人ながら先般からTPP参加賛成というブログを幾度かアップした。そういう自分を顧みると基本的に小さな政府と規制改革を支持し、安全保障条約を基盤に米国とより密接に結びつきつつ中国とは距離をあけるべしと云う考えを持っているのだが、その持論はこの2教授が発表した調査結果と一致して、改めて自分の立ち位置が再確認された様な気がしたのであった。日経新聞も最近は160円と高いが、時々面白い記事が掲載されていて、もったいないとは思いつつも毎朝購読してしまうのである。
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TPPのことは良く分かりませんが、一般的には国内の自由化を指しているようですね。ゴディバのチョコが1枚150円で売られれば、多分Meijiのチョコを買う人は少なくなると思います。ただ大事なのは、MeijiがNYやロンドンに出て行って売るつもりがあるか、ということだと思います。この議論、防戦一方ですが、攻めもあるので、どうしてそのチャンスを考えのでしょうか?とても不思議です。
投稿: MT | 2011年12月24日 (土) 05時30分