船友
飛鳥Ⅱのワールドクルーズで知り合ったご夫妻と私たち夫婦の4人で、一昨日はブラジル料理レストランで会食した。下船して丁度3ヶ月目の再会となるのだが、ワールドクルーズは横浜を出港して3ヶ月経ってもまだ洋上を航行していたのだから、改めて長いクルーズだったと4人で思い出話に花を咲かせたのだった。今年は震災の影響などで、僅か400人ばかりの乗客での世界一周だったから、航海終盤には顔見知りも増え、船上のあちこちで会話を交わす様になったが、その中ではやはり元勤め人だった人達とは話題に共通性があって親近感が湧いたものだった。
一昨日の船友も会社を定年間近で辞めて、ワールドクルーズに乗船したそうだが、船のダイニングやサロンで世間話をしたのに比べて、盛り場のレストランで喋るのも違った趣向で、「 あれは現実だったのだ 」と不思議な気持ちが湧いてくる。私と云えばこの3ヶ月で会社員に戻ってしまったから、日常の些事や仕事の雑事に埋もれて早くも生活に倦んできた中、船上で知り合った友人と久しぶりに話しをすると、多くの出来事が蘇って来てリフレッシュした気分になる。その店の”飲み放題”カイピリーニャの酔いも手伝って、計140回通った船上ダンス教室の思い出話などで盛り上がったが、折角初歩を覚えた社交ダンスも、いざ陸上のダンスクラブを覗いてみると異質な空間で敷居が高いし、結局ワッハッハと酔っ払いの会話になってしまったのもご愛嬌である。
しかし考えてみると、3ヶ月半も同じ船で過ごすと云う事は、陸上で隣近所に住むのとはまったく違うものだと云うのがわかる。飛鳥Ⅱといえどもたかだか長さ200米、幅29米に過ぎず、航海中は一歩も外へ出られる訳ではないし来客も訪れない。船というのは閉ざされた空間での生活だから、貨物船のクルーなどは「 給料付きの刑務所 」だと自嘲する者もいる位だ。もちろん最近のクルーズ船は乗客が退屈しない様な様々な設備と、立派な食事と趣向を凝らした企画に溢れているが、それでもある種の共同生活をする中に、乗客相互に運動部の合宿所の様な親近感が湧いて来て、それが長期クルーズの思わぬ楽しみである事が体験できた。
「 考えて見れば最近の老人ホームは、至れりつくせりの飛鳥Ⅱの延長みたいなものだから、将来の予行演習済みだわ 」などと、友人の奥方が言うのも妙に実感が伴って聞こえる。一昨晩はキャビンに戻るのに数分という船上と違って、ふらふら酔いながら地下鉄に乗って帰宅したが、「5年後、飛鳥Ⅱが新しい船にリプレースされていても、今のままでもその時はまた一緒に世界一周しましょう」と交わした約束を夢物語で終わらせないために、精々仕事に健康に気をつけねば、と電車に揺られつつ感じていたのだった。
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またお金を貯めてクルーズして下さい。
投稿: MT | 2011年10月18日 (火) 18時47分