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2011年7月21日 (木)

飛鳥Ⅱの重さと安定

航海も終盤、3度目のブリッジ公開の日に壁面に掲載されていた飛鳥Ⅱの青図をつらつら眺めていた。それによるとこの船の排水量(DISPLACEMENT) は30,862トン、ライトウエイト(実際の船体の重さ)が23,314トンで、本船の積載可能トン数=載貨重量トン(DEAD WEIGHT)は7,548トン、その際の満載喫水線は8.022米(海水で)と表示されている。客船は、ふつう船の容積で計る総トン数を使うため( 因みに飛鳥Ⅱは50,142総トン )重さを示す重量トンはあまり使わないが、そういえば飛鳥Ⅱの載貨重量トンはいくらなのか、職業がら俄かに興味を覚えた。


アルキメデスの定理で習った様に、物体は押しのけた水の量だけ浮力を得るので、飛鳥Ⅱの場合は船体の下部が8米ほど水面から入って押しのけた水の量(排水量)が約3万m3、水の比重を約1とすると3万トンの浮力を得る。そのうちエンジンや鉄板などの実際の船の重量(ライトウエイト)が23,314トンで、残り最大7,548トンのキャパシティーに燃料油(最大で2,000トン強くらい)やバラスト水(最大で数百トン)や飲料水、乗客やクルーとその荷物、食糧や外部から持ち込んだ備品など、本船外から積むものが収まる様に設計されている事になる。


一般の貨物船では3万トンほどの排水量だと、船種によってやや異なるもののライトウエイト(実際の船体の重量)が5千トンほどで、残り2万数千トンが貨物や燃料油、バラスト水の為に使われるから、客船はいかに鉄の固まりであるのかがわかる。航海中はその鉄の船が、あちこちで始終ギシギシと音を立てて、波浪で船体にかかったストレスを逃したり吸収したりする事が感じられるが、明け方などに寝ぼけ眼でまどろみながら、このギシギシ音を聞いていると、ああ船に乗っているのだなあと云う実感が湧いてくる。


一方飛鳥Ⅱの最上部にあるプールや大浴場に浸かる際に、いつも脳裏に浮かぶのが、これらの水が前後や左右に移動する度に、船体の安定性にどの程度の影響を与えるのだろうかと云う事である。かつて海運会社で営業を担当していた際、デッキ上に荷物を高く積み上げるコンテナ船や材木船の船長と話をすると、「こんなにデッキの上に積んだら、重心が高くて危険だ、もうこれ以上積むのを勘弁してくれ」とか「 仕切りの大きいタンクの中の水が、時化で動くので本船は怖い」などという話を散々聞かされてきたので、船の上部に自由に動く水面があると、どうしてもそんな会話で各船長や一等航海士と争った事が脳裏に蘇る。


という事で、客船の上部に蓄えられた水の移動に対しては、漠然とした疑問を持っていたが、ブリッジ公開の日に見た青図で確かめると、プールや浴場の自由水の移動による船体への影響は、当然の事ながらほとんど無視して良い様な数値の様だ(当たり前か)。その他、船に乗ると、この船の償却費は一体今いくらくらいなのか、クルーの人件費や潤滑油は昔と桁違いに上がっているのだろうか、外国船ならタグを使わないのに日本船は慎重だなどと、ついつい様々な運航コストを考えてしまう。特にスピードを上げて次の目的地まで突っ走り、入港一日前くらいから予定時間に合わせて減速調整していると、客船の宿命とは云え「ああ燃料がもったいなかった」などと老婆心ながら余計な心配をし、その運航の苦労に思いを寄せてしまう。


写真は日本政府(JG) が認定している飛鳥Ⅱの満載喫水線マークとブリッジの青図(キャパシティープラン)
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