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2011年7月27日 (水)

クルーズ船は揺れない、のか?

近頃クルーズ船の広告が雑誌や新聞をにぎわしている。クルーズを紹介するにあたり「ドレス・コードとは?」とか「船旅は退屈しない?」などと言う質疑コーナーが広告にあるのだが、その中には決まって「船は揺れるので心配ですが? 」という質問がある。それに対して「 最新のフィンスタビライザーがついているので揺れはほとんど問題ありません 」と云うのがお決まりの答えなのだが、プロモーション側にとってはこれが常套文句ではあっても、常々こんな紋切り調の返事で良いのかと私は疑問に思っている。最新の大型客船で豪華な設備に美味しい食事が食べられても、船酔いをしては旅の楽しみも相殺されてしまうのだが、船というのは陸上の乗り物と違って、一旦港を出れば「 気分が悪いから降ります 」という訳に行かない。


私は、この種の質問を受けた時「 船は海に浮かんでいる以上、大きさに係わらず必ず揺れます。フィンスタビライザーは確かに横波には有効だが、縦の波や大きなうねりに合えばあまり効果はない様です。ただ客船は食事の際は進路を変えたり、なるべく島影を通るなどの揺れない工夫はします。それでも揺れるのがどうしても嫌ならお止めになった方が良いかもしれないですね 」と言う事にしている。また私の体験から「 大型の船の方が普通は揺れは少ないが、うねりの大きさや周期によっては、むしろ小さい船の方が酔いにくい事もあります 」とも答える。


実際、本職の船乗り達に聞いても「船は揺れるよ、揺れないのはVLCC(20万トン以上の超大型タンカー)が荷物を満載している時だけど、その時は本船のオモテ(船首)がググーと波に持ち上がるのがわかる」と言う。今回の飛鳥Ⅱのワールドクルーズでも、シンガポールを過ぎてインド洋を横切りアフリカ大陸に着くまでは、南の海上に優勢な高気圧が居座り、そこから噴き出した風による大きな周期のうねりが毎日続いたのだった。乗客の中には「あの時は揺れるのでご飯も食べられず、もう乗るのを止めてケープタウンから帰ろうかと思った」と感想を漏らす人も確かに何人かいたのである。


今回、世界を廻る約70日ほどの航海日のうち、揺れていると云う日と、静かな海だなと感じる日が大体半分づつくらいだったと回想している。かつて正月のグアム・サイパンクルーズで生まれて初めて船酔いを経験した私だが、今回のワールドクルーズでは幸いな事に、酒の飲みすぎの二日酔いは何度かあったものの、揺れて酔い止めを飲むほどの事はなかった。むしろ「 ああ揺れている、これもクルーズの楽しみ 」と思って、動揺の周期に体を同調させる位に考えているのが酔わないコツではないだろうか。それでも人間の順応性と云うものは大したもので、ほとんどの乗客は航海半ばから少々の揺れにも慣れてきた様子だし、殊にクルーズ後半の太平洋は、ブリッジの傾斜計も最大で7度くらい傾ぐだけの平穏な航海だったので、下船してみると総じて穏やかな良いクルーズだったと懐かしくなるものである。

写真はブリッジのクリノメーター(傾斜計)
20110727

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