ペリカンに噛まれた
飛鳥Ⅱは6月23日朝にメキシコの古くからの景勝地アカプルコに入港した。例によって特段予定も入れていなかったので、飛鳥Ⅱから歩いて行ける場所として、江戸時代にこの地に上陸した支倉常長の像を見に行ったり、パパガージョ公園を散策したりとのんびり過ごす事にした。しかし夏至を過ぎて間もない今日この頃、北緯17度の太陽は頭上から強烈に照りつけて、街中を歩いていると陽射しに頭がクラクラしそうである。と、その時海岸を見ると、男達が何人もで地引網を曳いているのが目に留まったので、涼を求めるのもあって我々夫婦は砂浜に下りて行った。
そういえば昔は、海水浴で海岸に行くと地引網を曳くのを手伝って、褒美として地元の漁師から小魚をもらったりしたものだが、最近は人の手で曳く地引網などを日本では行っているのだろうか。懐かしさに傍に寄って網が砂浜に上がるのを見ていると、網の中にはアカプルコ湾に捨てられたポリ容器などのゴミに混ざってアジ、サバ、タイや小型のサメなど結構様々な魚が絡めとられて上がってくる。地元の漁師達は手際よく種類別に魚を砂浜に並べるが、エイなど市場で売れない魚は手づかみにすると、ピチピチ撥ねるうちに次々に海に返していく。
そんな場面を狙って、上空からはペリカンの群れが、漁のおこぼれにあずかろうと集まってくる。それにしてもこのペリカンという鳥は、形も大きいし、その飛んでいる姿が恐竜にも似ていつ見ても薄気味悪い鳥だ。漁師たちは網目からこぼれそうな商品にもならない小さな魚を、そんなペリカンに放り投げてやっていたのだが、そのうち観光客の何人かが、漁師のサービスでそんな小魚を手渡しでペリカンにやる事になったのは、観光地アカプルコならでは情景なのだろう。
ペリカンなどにあまり近づきたくない私は、えさやりを遠巻きに眺めていたのだが、好奇心が人一倍強いわが妻はそんな野生のペリカンに小魚をやっては楽しんでいる。最初はエサをこわごわ投げていた彼女だが、そのうち漁師をまねてペリカンのグロテスクな大きな口ばしに魚を手渡しで運んでいるのは勇気があるというか何というべきか。海外にいる時には、野生の動物には警戒しておいた方が良い、いつガブっとやられるかわからないからと思う臆病な私は「もうやめておけ」と言いたいところだが、そんな事でひるむ様な彼女ではない。
しばらく妻は小魚をペリカンにやっていたが、そのうち指を口に入れてとぼとぼと帰ってくる。「 どうした 」と聞くと「 ペリカンに指を噛まれた 」と彼女。何でもペリカンのあの大きなくちばしの縁の部分には、魚を捕らえるためなのかギザギザがあって、油断した訳ではないがそれにがぶっと挟まれたそうで、私にしてみれば「用心が足りない、それみろ 」と言いたいところだ。まあ狂犬病の恐れがある野犬に噛まれた訳ではなし、右手の中指にちょっとした切り傷をつくっただけで大した事はない様だが、ペリカンに噛まれて怪我をした等と言う不用心な日本人が年に一体何人いるのだろうか。好奇心もほどほどにと思いつつ、バカだなあと妻に聞こえない様に一人呟きつつ飛鳥Ⅱに戻って来たのだった。
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