ワールドクルーズ・ダンス教室
船旅とくればダンスである。昔の大西洋を亘る定期船のホールで、ダンスを踊る貴族などの映画を見ると、何と優雅ですばらしいものかと思う。しかし私がダンスを習うなどと云えば大抵の人は、「 冗談だろう 」とのけぞって吹きだすほどであるから、私自身としても踊る事について心のこだわりがないわけではない。ではあるが、どんなものでも「 たしなみ」は、知らぬより知っていた方が良いだろうし、長い船内生活で何か身につけられるとすればダンスくらいのものだろうかと思い、変わらず船内のダンス教室になんとか通っている。
日本を出てクルーズも60余日、そのうち約50日間の終日航海日の朝と夕に2回づつ行われるダンス教室は、これまで計約100回ほど開かれた事になる。ダンスは多分ワールドクルーズの各種催しの中でも最も人気のある教室の一つと思われ、教室の進め方で、参加者からの熱心な希望や苦情が多いそうである。中にはオーバーランドツアーで、1週間も飛鳥Ⅱから離れている間、ステップを先に進めないでくれと要求する人もいるとの事で、先生もあれやこれわがままな注文をさばくのに大変である事が伺えるのである。
子供の頃から踊りなどやれるか、と硬派を気取っていた私としては、連日のダンス教室は、はっきり云って食事のたびに嫌いな料理をこれでもかと出される様なもので、嫌気が差すこともままある。しかし妻の叱咤激励に逆らうと、のちのち拙い事になるであろうから、なんとかここまで続けて来たのだが、よちよちステップながらブルース・ジルバ・タンゴ・ワルツ・など約10種目を次々と毎日の様に良く練習したもので、この点では自分を自分で誉めてやりたくなるほどだ。
もっとも練習には参加するものの、毎夜ホールで開かれるダンスタイムは、ベテランの人たちがところ狭しと踊っていて、気の弱い私などはちょっと覗いただけで気後れして、踊らずに自室に帰ってきている有様である。なにしろ「 ダンスが上手になるために、これまで払ったレッスン料は高級車一台分 」などと豪語している人たちが踊っているから、「 ダンスを覚えるのにそんなに金がかかるなら、だんぜん高級車を買った方が良い」 などと思っている私にはついていけるはずもない。「 夜のダンス会場にいらっしゃい、もっと上達するから 」と言われると、「 外国船ではワルツやルンバをまともに踊るとかえって『浮いて』しまうからこれで十分 」などと偉そうに負け惜しみをうそぶいている毎日なのである。
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