クルーズのかげには
乗船して一ヶ月あまり、ふっと気付くと髪の毛も伸びきたので、今日は船内の床屋さんに行った。本船の資生堂スパ・アンド・サロンは普段は美容師だけが乗船しているそうだが、長期クルーズになると理容師も乗船する。値段を聞くと髭剃りなどがついた普通の床屋さんコースが4千円だと云う。最近は東京も安い床屋が増えてふだん2600円也で調髪してもらっている私にとって、この料金はちょっと高いと感じるが、他にチョイスがないのでしょうがない。
昔の外航の貨物船には司厨員やボーイなどに散髪の上手な人がいて、船内で気軽に髪を刈ってくれたものだった。私も若い頃に研修で乗船していた際は、航海中に幾度かおやじさん(船の用語でコックの事)の床屋にお世話になったのだが、あれから30数年経ってまた洋上で散髪するとはちょっとした感動である。当時の殺風景かつ男だけのむさくるしい貨物船の事務室の床屋と違って、ここではきれいな美容院で、ホテルの様なしゃれた雰囲気で髪を刈ってもらえるのである。チョキチョキとはさみの音を聞いていると世界一周するクルーズにはいろいろ職種の人が乗船していて、それぞれの仕事のおかげで我々が快適に船内生活を送れる事をあらためて思い起こす。
そういえば今日はアフリカ最後の寄港地セネガルのダカールに入港したが、ここまで横浜から一緒に乗船しながら、アフリカ各港のツアーを準備してきた日本の旅行社の代表が無事お役を果たして下船した。モーリシャスからこれまで4つのアフリカの港では、着岸すると真っ先に彼が岸壁に降り立ち、ツアーバスの手配が予定通りできているか、諸準備が手配通り行われているか、心配げに立ち回っている姿を見てきた。今日は最後とあって、一声 「 大変でしたでしょう 」と声をかけると 「大変なんてもんじゃなかったです。港に着くと真っ先に予定通りバスが来ているか、心配で心配で。不整脈が止まらなかったんです。」と笑っていた。
なにしろ万事が予定通り進む日本とは違うアフリカの地、急な航路変更で準備の時間もない上、普段は訪れる日本人も少ない土地に400人もの日本人が一挙に上陸するとあれば、ツアーの手配を準備するのは、大変な仕事であろう事は彼の言葉を聞くまでもなく想像がつく。うまく行って当たり前で、予定したツアーが手配のまずさで催行でもされなかったら、大変なクレイムになる事であろう。何気なく本船から上陸しツアーバスに乗車する間にも、彼の様に胃が痛む思いをしている人がいて、つつがなくクルーズが進む事に改めて感謝した次第である。今日はダカールの町のどこかで、あの社長は無事一仕事こなしたうまい杯を傾けているのだろうが、そのほっとした姿が目に浮かぶ様だ。
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