植民地支配
飛鳥Ⅱはナミビアのウォルビスベイに初入港した。今回のワールドクルーズに当たり、海賊とアラブ騒乱で当初のスエズ経由ルートを変更した際に、急遽手配された寄港地であるが、これが思いもよらず興味ひかれた、いわば掘り出し物ともいえる場所であった。まず南アフリカ共和国の北に隣接するナミビアなどという所は、我々日本人には極めて馴染みの薄い国であって、こんな国に訪れる事ができるのは予定外のルート変更の賜物、このクルーズに彩りを添える港かと入港前から好奇心をそそられる。
船が航路灯標に沿って陸に近づくにつれ視野に広がるウォルビスベイ港は、我々が日ごろ馴染んでいる三菱製やIHI製の港湾機器でなく、ヨーロッパのリーブヘル社のクレーンなど欧州の機械で装備されており、いよいよここは大西洋なのだと感じさせてくれる。港の一隅にある立派な修繕ドックに入渠している船は、極東ではあまり見ないオスロ船籍やルクセンブルグ籍、岸壁に係留されるトロール漁船はジャマイカ籍などで、ここはヨーロッパやカリブ諸国の経済圏である事を思い知らされる。
ナミビアという国名はアフリカ大陸の西岸に広がるナミブ砂漠に由来するそうで、港の周りは南北800キロ幅80キロに亘る大砂漠、黄金色の砂丘を見ていると今にもハリソン・フォード扮するインディアナ・ジョーンズがテンガロンハットをかぶって現れるのではないか、という気がしてくる。ナミビアの歴史を聞けば15世紀以来、ドイツとイギリスの植民地にめぐる争いと南アフリカ共和国との確執に明け暮れた複雑な過去で、やっと1990年に現在のナミビア共和国になったと云う。
観光バスで港から30分ほどにある中心地、スワコプムンドを訪れると町はドイツの風情そのもの。4月末のからっとしたそよ風に、多数のドイツ人観光客で溢れる街はドイツ語の看板あふれ、ここはヨーロッパの一角なのかと一瞬錯覚に陥る。日本人が知らないアフリカの土地に、欧米のかつての強国はこんな旧植民地をあちこち持っていて、旧宗主国の人々は母国の延長の様な感覚で気軽にリゾートで訪れている様だ。これを見ると、何世紀にも亘った帝国主義の時代が、アフリカの歴史や経済に深く関わってきた事を改めて肌で感じる事ができる。砂漠の国で、瀟洒な家に住むヨーロッパ系の人々が黒人に混在して生活している様を見ると、我々の知らぬ世界が随分あるものだと、ちょっと学んだ気がしたのだった。
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楽しいクルージングのレポート、いつも楽しみにしております。
セネガルなどアフリカ大陸に赴任した同期隊員達は、人生観が変わったと皆が言っていたぐらい、パワフルな大地みたいですね。
ダカールのレポートも楽しみにしております!
また、船内の生活も教えてくださいませ〜!!
投稿: 院長 | 2011年5月 4日 (水) 11時14分
セネガルにいた協力隊員も講演者として乗船していて、いろいろ教えてくれます。あんなに若い子が協力隊員として海外で活躍していたかと思うと、日本も捨てたもんではないなと感じます。(彼女はゴミの分別を指導していたらしい)以上、おわり。またね。
投稿: ブログ主 | 2011年5月 5日 (木) 08時09分