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2011年2月21日 (月)

「デフレの正体」

20110220何でも50万部を売り上げて「日本人必読」と宣伝されている『デフレの正体』藻谷浩介著(角川ONEテーマ21)を読んでみた。著者が本の中で繰り返し述べているのだが、既存の経済学者の分析や理論が有効に効果を発揮しない日本の現状にあって、違う切り口からデフレスパイラルの分析と処方をこの本は提示している。私は昨年1月のブログでも取り上げたとおり、いわゆる格差問題の多くは日本の高齢化に伴うものだと感じていたので、わが意を得たりと一気に『デフレの正体』を読破した。


私も劣等生ながら経済学部を卒業した一人なのだが、今や経済学が学問として成り立つものなのか、かなり懐疑的な気持ちを持っている。「他の条件が同じであるならば」とか「こういうモデルでは」とか「人々が合理的に行動すれば」などと、これまでの経済学が前提としていたものが、現代社会ではあまりに多様化し、変数が多くなりすぎているのではないかと感じるのだ。例えば現在おこっているイスラム社会の騒乱によっては、ハンチントンが「文明の衝突」で指摘した「西欧」対「イスラム」の亀裂が、今後より一層大きくなり、20世紀の帝国主義の対立や東西冷戦を上回る深刻な事態が生じるかもしれない。その時に人々の行動は、経済合理性より宗教性を帯びた目的に変わる事も予想されるだろう。


これまで優秀な経済学者が分析し予想してきた経済政策の効果が上がらず、彼らが後付け解釈に終始しているのを見ると、経済学などよりこの世の現象をうまく説明できるのは、社会学や人類学、心理学さらには宗教学や文学なのではないかとさえ思えて来るのである。ネットで検索すると「『デフレの正体』に書いてある事はおかしい」とか「自己撞着である」かの如き批難をする専門家も多いが、学問的アプローチはさておき、私の実感としてはこの本は既存の経済学者が書いたものより、よりうまく日本の現状を表わし、良き処方箋を示していると思う。


最近、都内や近郊の住宅地を平日の昼間歩いて見ると、一昔前とは比較にならないほどの、現役を引退した多くの男性の姿を見る。引退世代の人口が今後一気に加速するのは確実なのだが、これはわが国史上初めて直面する生産年齢人口の減少なのだと云う。この引退した高齢者が持つ1400兆円もの金融資産を一向に消費に廻さず、将来への不安から死蔵している事がデフレの本質というこの本の指摘は、我々の周囲を見ると「そうだなあ」と実感として頷けるのである。これを見て横では妻が「だからクルーズにでも行こうよ」と言っているが、「うーん、先立つものが・・・」と絶句して躊躇する私こそ、この本がまさに問題にしている高齢者の消費行動そのものだ、と苦笑する。


旧ブログ・格差問題の本質(2010年1月27日)


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