魔の30キロ・地獄の35キロ
2月27日はいよいよ夫婦で東京マラソンである。レースが近づくにつれて天気予報もレース日和に変わり、私には25年ぶり(妻は一昨年以来)のフル・マラソンながら 「これはノー・エクスキューズだなあ 」とムードも盛り上がる。新宿・都庁前のスタート地点には36000名のランナーが集まり、石原都知事のスピーチに「(都知事を)もっと続けろ 」と野次が飛ぶと、出発前のランナーからどっと笑い声が起こるなどお祭りムードも漂う。それでも世界各国から集まったランナーと東京の街を駆け抜けるかと考えると、いつもとは違った高ぶりを感じるのであった。
9時10分・号砲一発ランナー達が新宿の街から、有明のビックサイトめがけて42.195キロの道にスタートする。私はスタート地点の大混雑と待機時間を考慮し、新宿の街を抜けてから早めにトイレに駆け込む作戦で、富久町のトイレに寄ってロス約2分するがこれは想定の範囲内である。そうこうするうちに5キロ地点辺りで3時間30分でゴールするペースメーカーに追いつき、これは良い目標とばかりしばらくついていく事にした。最近のマラソンは随分いろいろな配慮が施されているもので嬉しい事だ。
と言う事で、このペースメーカー達と一緒に日比谷・品川・日比谷・銀座・人形町と歩を刻むが、すいすいと至って調子良い。これなら35キロくらい迄ついていって余裕があったらスパートすれば・・・、などと虫の良い考えも頭にちらっと浮かぶ。しかし好事魔多しの例え通り、28キロ・浅草手前で突然足に来た。乳酸がたまって足が前に進まなくなったのである。「少し速度を落として様子を見るか」などという考えが浮かぶと、もういけない。ずるずるとペースメーカーたちに離されてしまい、そこからは足を引きずり一人旅である。
30キロを過ぎると足の疲労が著しくて、がっくりスピードが落ち「歩きたい」とか「棄権したい」とか悪魔のささやきが脳裏をかすめるのだが、沿道を埋めたぎっしりの応援に、とにかくジョッグをしながら前進しようと覚悟を決める。35キロからの臨海地区は、大小の橋の上り下りに加え、道幅が広くはるか先まで視界が効きすぎるのにうんざりし、まるで牛歩の歩み。3時間30分などという目標はどこかにすっかり消えうせて、何とかゴールさえできれば良いとひたすら歩を進めるのみである。”魔の30キロ・地獄の35キロ”とは正にこの事だと、マラソンの怖さをひしひしと感じたのだった。
考えてみれば、これまでの蓄積があるはずとばかり、今回は25キロ以上の長距離を練習しなかったのだが、市民ランナーがそれで走りきれるほどマラソンは甘くはない。言われている様に、30キロまでのレースとフル・マラソンは、まるで別の競技というくらい違う、と実感した。アマチュア・ランナーにとってはフルは陸上競技というより山登りなどの方に近い感覚だと私は思う。稜線でばててしまい、次の小屋に夕方までに辿りつかないと遭難してしまう状況で、とにかく足が前に出ないもどかしさ、とでも言った感じだろうか。
40キロすぎると僅かな傾斜でも両足に痙攣がおきるので、とにかく亀の様な足取りで何とかゴールにたどり着いたのだが、大失速の結果、時間は3時間50分ほど。今回はフルマラソンは侮ったらいけない、という事を改めて感じさせてくれたレースであった。などと考えていると、続いて妻が4時間を数分越えたタイムでよろけながら入ってきて「 腹筋がつった、嗚呼つらかった、もうしばらくフルマラソンはごめんだね 」と顔を見合わせて頷いたのであった。
さて四半世紀ぶりに走ったフルマラソンであったが、この東京マラソンは実に良くオーガナイズされたレースだと感じた。各30分刻みに配置されるペースメーカーなど昔にない工夫も多々あって、参加者が充分力を発揮できるように設定もされている。今までマラソンでゴールし走路に向かって一礼する有名選手の姿などが放送されると、なんとなく「あざといな」などと感じていたが、実は昨日、苦労の末辿りついたゴールで、回れ右して思わず今まで走ってきた走路にお辞儀をしてしまった。主催者・スポンサー・ボランテア・警察や消防、それに途切れる事ない沿道の応援に、「自分一人が走っているのでない」、「皆に走らせてもらっているのだ」と感謝の念が湧いた良い大会であった。
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昨日は本当にお疲れ様でした!
昨年とはうって変わってのお天気、さぞかし気持ち良く走れるのでは…、と思いきや、2月にあるまじき気温上昇!?ランナーの皆さんは大変でしたね〜!!
今年は応援する側に回って、存分に東京マラソンを堪能しました!!
走りたい気持ちをいっぱいチャージする事が出来ました。
ご夫妻揃っての大失速も、今年の酒の肴になりますよ!
しばらくゆっくり休んで、また走りましょう♪
投稿: 院長 | 2011年2月28日 (月) 12時53分
院長先生、
応援ありがとうございました。まさかまさかの失速。
というか、これが実力。30キロとか35キロを一度でも走って、疲労具合を確かめておくべきでした。もうしばらくは、フルマラソンは・・・・・。
投稿: 失速王 | 2011年2月28日 (月) 20時09分
ええ、私は30kmからの怖さを2年前に経験したばかりだったので、今回は本番前に是非30km走をしたいと…。でも「日頃走っているから大丈夫だよ」
あちこち怪我をしていたこともあり、1月末のハーフ以外は結局15km走しかしなかったのでした。一応蔵前からゴールまでの試走だったので、イメージトレーニングにはなったけど、マラソンは甘くありません。
夫唱婦随ということで(゚ー゚;
投稿: 失速妻 | 2011年2月28日 (月) 20時33分
本当にお疲れ様でした!
やっぱりもう一度走りたいなあと改めて夫とうなづいてました。
つまり、私たちはラクして走ったということ。。
「もういいや」という走りをしないとね。
今日みたいな寒さじゃなくて本当に良かったね、と思う反面、去年ってこんな寒かったの・・・???と驚愕。
走ってる方はまだ良かったけど、本当に寒かったでしょう・・ありがとうございました。と、一年越しにまた感謝の念。
投稿: のすけ | 2011年2月28日 (月) 22時47分
追伸:
「練習は不可能を可能にする」も、「ただし、練習の内容による」ってことで
投稿: のすけ | 2011年2月28日 (月) 22時49分
のすけさん
応援ありがとう。本当に辛かったけどゴールに辿りついたのは、もしやめたら皆に何を言われるかわからない、という恐怖(笑)。
今度の日曜日ウイメンズ・ランは原宿で応援しますよ。一度余裕でなく失速して死んでるのを見てみたい。
投稿: 失速王 | 2011年2月28日 (月) 23時00分