バスの道間違い
川崎市営バスが今年になってから何度か運行経路を間違い、問題になっているそうである。先日は溝の口駅南口発の梶ヶ谷行きバスが左折すべき交差点を右折し、元の経路に戻れず結局始発の溝の口駅に戻ったと報道されている。この辺りは良く知っている場所なので、運転手がどう勘違いしたのか、ふと興味を覚えて調べてみた。市バスの経路図によるとこの路線は溝23系統、溝の口駅を発車して隣駅の梶ヶ谷までの短距離路線で、日中は一時間に2便の運行、使用されるバスも小ぶりのローカル路線だ。
溝23系統の路線の途中には、温水プールや各種施設のある市民プラザがあって、街道からやや入った市民プラザに寄るのにバスは取り付け道路を入り、一旦構内をぐるっと廻って再び同じ取り付け道から街道に出る事になっている。報道によると43歳のバスの運転手は市民プラザで乗降の後、取り付け道路から街道に戻る際に左折して梶ヶ谷駅方面に行くべきところを、右折して溝の口の方へ戻ってしまったらしい。慌てて無線で営業所に連絡、左折を繰り返して元の道へ戻ろうとしたが、うまく曲がる箇所がなく結局始発の溝の口駅に戻ってしまったと云う。たしかにあのあたりは左折すべき左側に丘陵が迫り狭い坂道が多く、ワンマン運転で路線外のわき道にそれるのはかなり難しい地域ではある。
また勘違いの現場は、上り便も下り便も同じ取り付け道を往復するので、一日に何度もここを通る運転手は、うっかりすると出口で方向を間違う事もあろうか、と云う地点ではある。乗客の身になれば、せっかく乗ったバスなのに、振り出しの溝の口駅まで戻されてさぞや迷惑だった事だろうが、ただでさえ交通事情の悪化や乗客の老齢化で安全運転に気を使わざるを得ないバス運転手が、ふと何かに気を取られていたのだろうか。
そういえばアメリカで自家用車が修理中で使えぬ時に、メトロバスでオフィスに往復した事が幾度かあった。ある時フリーウエイの出口を間違えて出てしまい、乗客にここからどうやって目的地まで行ったら良いのか、相談しながら運行したバス運転手がいた。その時は「アチャー、間違えちゃったよ、どうしたら良いんだい」とばかり黒人運転手がすぐ後ろに座る通勤客の男性に声をかけると、毎日バスを利用していると見えるその男性が落ち着いて道を指示し、満員の車内も平然としたものだった。まあ、どの道を通っても広々としているアメリカ郊外だからこその話だが、取り付け道を出る際に勘違いしただけで、全国的なニュース種になる日本のバスの運転手は、気の休まる暇もないのだろうと、川崎市バスの運転手にいささか同情したのであった。
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