大人の社会見学
小学校4年生の時の都内見学は、羽田空港以外どこへ行ったかさっぱり覚えていないが、最近は時間もできて様々な見学会に行けるのが嬉しい。旅行社などでも自動車工場見学や観光地を組み合わせた熟年向けツアーが盛況だというが、普段身近にありながら意外と知らない場所を見聞きできるチャンスを活かしてみたいものである。という訳で、先日は我が区の土木部公園科が主催する”荒川を見学しよう!”という半日ツアーに参加してみた。これは国交省の河川巡視船に乗って荒川の水質調査や荒川の歴史を学ぼうという催しで、昼過ぎに新宿駅西口から貸切バスに乗って、荒川の赤羽近く岩淵から河口に近い小松川までを巡視艇で下り、またバスで新宿駅まで戻る無料アウティングなのである。
さて当日は都バスの路線バスでも貸切って往復するのかと思って集合場所に向かうと、なんと立派な新車の”いすずガーラ”観光バスではないか。ツアー参加者は定年退職夫婦から子供連れ母子までさまざま約20名くらいで、一同都内の渋滞をぬけ1時間で岩淵水門近くのリバー・ステーションに到着し、そこに待っていた巡視艇”あらかわ”に乗り込んだのだった。ここから船で川下りに出発するのだが、このツアーの目的はあくまで”お勉強”、まず船内で荒川の水をビーカーに入れて水質検査を皆でおこなう。そんな段取りがいかにも教育的なツアーっぽくて行政の催しなのだと納得する。なにやら子供の頃の化学実験の様に、試薬やら機器を使って川の水のPHとか水中酸素量などを測定すると、今では荒川も魚が充分すめるほどきれいになっている事がわかる。
約1時間の川下りの後半は国交省・河川事務所の係員が、荒川の概要や歴史を船内で説明してくれる。それに依ると、現在の荒川の下流は隅田川の治水対策として、明治44年から昭和5年にかけて田んぼの中を掘った人工の川(放水路)なのだそうだ。道理で荒川下流は川幅も広く真っ直ぐ流れている事がわかったのだが、途中で綾瀬川や旧中川を横切って川を掘削したので、現在でも川の十字路が見られるのが珍しい。もともと昔の荒川は現在の中川に沿って流れていたとの事で、江戸時代になって東京湾に注いでいた利根川を銚子方面に付け替えたり(利根川東遷)、荒川を旧入間川の経路に変更したりと幕府の治水対策により、関東平野の川は昔とだいぶ様相が違う事になったそうである。今では堤防で囲まれ管理される河川であるが、縄文時代は海であったという低地の関東平野の河川は、時代時代によって縦横無尽に流路を変え、洪水をおこしたり土地を潤したりして来たのだろう。荒川河川敷の広大な葦の群生を見ていると、思わずいにしえの関東平野が想像される大人の都内見学であった。
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