小さな大投手
慶應・立教第1回戦に朝まだ寒風吹き荒れる神宮球場に行った。最近スポーツ推薦を再開して野球名門校の選手がずらりと並ぶ立教に、慶應は近年どうも分が悪く、優勝した春季リーグ戦も唯一立教だけに勝ち点を落としている。試合は序盤、立教新座高校を埼玉県大会の決勝まで引っ張った立教のエース岡部君と慶應のエース竹内君(中京大中京)の投手戦だったが、立教は岡部君のエラーなどで失点を重ね、結局8対4で慶應が勝った。東大以外の5校の戦力が拮抗している今シーズン、勝ち点4で優勝が決まるのではないかと私は予想するのだが、同勝ち点の場合は勝率で優勝が決まるので、まず1勝を挙げるというのは慶應が優勝争いに加わる為に大変良かったとホッとする。
さて神宮球場のネット裏で観戦していると、時々OBであるプロ野球の有名選手やかつての名選手と隣あわせになる事がある。そんな時は昔の選手の話題や最近の野球界の裏話などが漏れ聞こえてきて、思わず聞き耳をたててしまうのである。今日はたまたますぐ近くに、あの江川でさえ抜けなかった神宮48勝という金字塔を打ち立てた”小さな大投手”法政OBの山中正竹氏が友人と座っていた。テレビで見るとおりの端正な顔立ちと落ち着いた声ですぐに山中氏だとわかったのだが、かつてキャッチャー田淵のミットめがけて球を投げた指は、そう大きくもごつくもないきれいなものである。
かつて中学・高校時代に六大学野球を観戦に神宮球場に来ると、小柄でやさ男の山中投手と大きな田淵捕手のでこぼこバッテリーが、後年プロで活躍する谷沢や高田などそうそうたる大打者を打ちとっているのを見たのだが、そのひょうひょうたるスリークオーター左腕の山中投手になんともいえない憧れを抱いたものであった。球場のシートのそばを通りかかる他校の大先輩や後輩たちも、皆一様に山中氏に一礼をして行くのをみると、彼の記録があらためて偉大なものであるのを感じるのであった。さて神宮球場で耳慣れた6校の校歌や応援歌を聞きながら学生たちの野球を観戦していると、浮世のいろいろな悩みもいつしか遠くなり、心が軽くなった気がするのが常なのである。
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