坂の上の雲
経営破綻したJALの株主優待券を費消してしまおうと、妻に「どこか 旅行に行かない? 」と聞いたら「 坂の上の雲 」で話題になっている四国・松山に行ってみたいというので、この週末は松山に一泊旅行をした。妻は最近テレビで話題の「 坂の上の雲 」にたいそう刺激され、司馬遼太郎の原作を文庫本で一気に読破してからというもの、ぜひその小説の舞台となった松山を訪れて、主人公の秋山兄弟や正岡子規の足跡を訪ねたいのだそうである。
という事で梅雨空の下、昔の軽便鉄道を再現した”坊ちゃん列車”にゆられ松山市から道後温泉へ、温泉見学の後は秋山兄弟の生家を訪れ、新設の「坂の上の雲」ミュージアムへと小説ゆかりの地を廻る事となった。旅行など行き当たりばったり、気分次第で目的地が変わってしまう私に比べて、理科系の妻は事前勉強よろしくスケジュール管理ができているので、わたしなどは黙って妻のスケジュールに従う事にする。町のあちこちを訪れてみると、近年この町は「坂の上の雲」をテーマに、整備に気を配っている事を感じる。
「坂の上の雲」に沿って、市内に散らばる正岡子規や秋山兄弟ゆかりの地を訪れるうち、小さな国が迎えた開化期の胎動が身近に迫ってくる様な錯覚におちいり、そこに登場するこれら人物が、時代へ参画する鼓動が聞こえてくる気がしてくるから不思議だ。それは教科書的にもの事を俯瞰する歴史でなく、この古い城下町をたどる事によって、彼らと同じ目線にいる事から生じる感覚である様だ。こうしていると、あの時代の日本をリードした人間たちのドラマと、歴史の進展があざなえる縄のごとく絡みあって、日本近代化の息吹が身近に迫ってくるのだが、それは歴史が町の一部であるとでも云うべきコンパクトな松山ならではの体験であろうか。
松山などはこれまで数えきれないほど来ていると、気軽な気持ちで妻と訪れた私だが、考えてみれば今まではすべて仕事やゴルフがらみの出張で、オフィスやゴルフ場、夜は料理屋さんと飲み屋位しか行っていなかった事に改めて気づいた。これまでに日本のすべての都道府県を訪れた事がある、というのが私の自慢であったが、仕事で行った所は実はあまりにワンパターンの訪問で、郷土の歴史などはほとんど勉強できずに来たのだが、こうしてテーマをもって国内旅行をするのもなかなか良いものだ、と感じたのである。
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