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2009年12月14日 (月)

加藤陽子著 それでも日本人は「戦争」を選んだ

たまたま本屋の店頭でこの本に目が留まり、面白そうなので購入してみたところ、ベスト・セラーであると新聞で紹介されている。なにせ出版が朝日出版社とあるので偏向した内容かと警戒しつつ読み始めたが、この会社は朝日新聞とは何も関係ない事がわかり、著者・加藤陽子氏も真摯な歴史学者である様なので安心して読み進む事にした。

冒頭、歴史を学ぶ意義などが解説してあって、歴史は一回しかない特殊な出来事の連続だから、歴史から普遍性を学べる事があるのか? などと学問的アプローチで読者を近代史の世界に引きずり込んでいく。著者によると、歴史は特殊なものに内包される一般を探り出すもので、ある事件は次の事件に影響を与えるのだそうである。例えばアメリカは、第1次大戦の講和が中途半端だった為にその後20年たらずで第2次大戦になったと言う教訓から、日本に原爆を落とし無条件降伏するまで徹底的に追い込んだのだと説明する。

さて本書は、日清戦争から太平洋戦争終結までの日本の出来事と、当時の世界情勢をいろいろな側面から分析しているのだが、その間イギリス、ドイツ、ロシア、アメリカなど世界の列強は、昨日の敵は今日の友、敵の敵は味方とでも云うべき権謀術数、右顧左眄の世界を繰り広げる。そこに中国の混乱やロシア革命などが絡み、とても教科書やメディアには描き切れないパズルの様な、激動の世界情勢が戦前の世界の姿である事を教えてくれる。

これを読むと日本は主体的にその世界に飛び込んでいった面と、列強の思惑に巻き込まれていった両面があって、一部メディアが示す教条的な日本帝国主義=悪と云う判断だけでは歴史を計れない事があらためて分かるのである。近・現代史の裏には、複雑な背景と様々な事実が隠されており、それを勧善懲悪で割り切る事に無理があろうと云うものである。ただ欧米的列強より遅れて出発したアジアの唯一の帝国主義国としての日本は、様々な面でもう少しうまくやっていれば歴史も変わっていたのでは、と云う読後感をもった。

さて先日、民主党の小沢幹事長が韓国へ行って、日本の植民地支配をあやまったそうだが、この本によっても朝鮮半島の近代史は大国である中国やロシア、日本に翻弄され続けたものである事が描かれている。日本の植民地支配だけが格別”悪”で、これを直ちに謝罪に結びつけるのは、いかがなものかと考えるが、私の考えは牽強付会に過ぎるだろうか?

バルクキャリアー 2009-12-15 23:33:28
エリア88さま

コメントありがとうございます。私は日本のクルーズ船に乗るたび、船側が私達よりもまだ上の世代をサービスの対象にしている事に違和感を感じています。確かに日本船の乗客の平均年齢は高いのですが、本場アメリカでは乗客の平均年齢は44歳で船内の雰囲気もかなり違います。日本船も、もう少し働く世代が乗りやすい航路や料金、日程、それに船内の雰囲気になって欲しいといつも思っております。そういう意味でエリア88様などの働き盛りのクルーズファンが増え船内でお会いできたらと思っているところです。

さて私は元来ひねくれ者でして、人が右といえば本当にそうか? と思い、左と言えば右を向くたちでした。ですから私のブログなどは変わり者の独り言として受け取っていただきたいとも思います。ただ日本の近・現代史はあまりにもステレオ・タイプの考え方に染まりすぎて、歴史というのはそんなに単純化できるのか、という疑問を常に感じておりました。歴史に正解などはなく、どういう見方を自分の基軸に置くかという事が大事だと思っております。もっとも歳とともに私もいささか保守化し頑迷になり、反対側の考え方を捨象しがちなのは良く自覚する処です。この本は歴史のいろいろな捉え方を教えてくれた一冊だと思いました。


エリア88 2009-12-15 21:16:12
初めまして、Monchackの夫です。このたびはMonchackが大変失礼しました。妻から紹介されてこちらに飛んできましたが、記事を読み、非常に考えさせられたのでぜひ感想を書かせてください。

今私は37歳です。ものごごろついたころから、戦争=かっこいいという考えしかなく、いろいろな本(歴史書まではいきませんが)を読んで自分なりに日本の過去について考えてきたところです。しかし正直いまだになにが正しいのか、なにが間違っていたのかまでの結論には達していません。今後も自分なりに、熟考していこうと思っています。今回の記事を読んでさっそく加藤氏の本を読んでみたいと思いました。これからもストレートな感想でさまざまな本を紹介されることを楽しみにしております。


バルクキャリアー 2009-12-14 23:32:08
Monchackさん

あれ、投稿はどこかへ消えちゃったかな、と思いましたが確認されて良かったです。クルーズの乗船記は妻のホーム・ページにまかせて、もっぱら私は思った事を書き散らしているだけです。これも会社を早期定年で辞めて、自営業で糊口を凌いでいるので時間ができた為でしょう。会社に勤めていた頃は、とてもクルーズに行く時間的の余裕がなかったのですが、収入が不定期になった分、時間ができて良かったかなと思っております。反対に忙しい妻は、乗船記のバックログをかかえて唸っております。

次は新装なったにっぽん丸にでもチャレンジして下さいね。ご夫婦のやりとりが面白いブログの乗船記を楽しみにしております。


Monchack 2009-12-14 22:11:41
こんばんは。

先日、ご訪問、コメントをいただいていたのですが、大変失礼をしておりました。

お恥ずかしいことにコメントの確認方法がわからないまま、今日まで至ってしまいました。

本当に申し訳ありませんでした。ご無礼をお許しください。

コメント欄からこちらに飛んできました。

こちらの記事には本当に広い見識がうかがわれます。

ニュースをただ取り上げるだけでなく、ご自身の見解を必ず加えていらっしゃいますね。

こういった不特定多数が閲覧するウェブの世界でご自身の意見をはっきり述べることは、勇気のいることと思いますが、深い思慮が感じられます。

今後も訪問させていただきます。よろしくお願いいたします。

このたびは本当に失礼いたしました。

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