グルメの嘘
むかし丸の内帝劇近くに古くからある有名な中華料理店があった。昼食時は近辺のサラリーマンで大賑わいだったが、パートのおばちゃん達のサービスが酷かった。サービス業にまるで素人なのだろう、キャパシティーを超えた注文や要求が来ると、まったく無視して見猿、聞か猿に変身してしまう。彼女らの視界内で客が呼んでも見えぬふり、注文をしても聞こえぬふり、「すぐに参りますので、少々お待ち下さい」と言えない。当時はあまりなかったレストランガイドでは「 味もひどいが、サービスはもっとひどい」と酷評を受けていたのだが、その事もあってかその後数年で老舗は閉店してしまった。数少ないレストラン評論などは良い事しか書かなかった時代、的確な批評に感心したものだった。
さてグルメ・ライター友里征耶の書いた新潮新書の「グルメの嘘」が面白い。お店から何らかの見返りを貰ってヨイショする記事や、やらせテレビ番組が多い中、どうやってそんな嘘のグルメ情報に騙されないかが書かれている。例えば「一人客お断り」とか「コース料理事前選択」のレストラン、「黙って食え」とばかり威張っているすし屋などは行くべきでない、店の論理に客が合わせる必要なしと誠に痛快である。ミシュランの日本版などは信用できないとか、クレジットカードを受け付けておきながら手数料を上乗せするのは詐欺まがいと飲食業界にとっては痛い点が次々とこの本では指摘される。松・竹・梅と三種類のコースがあれば梅が客にとってコストパーフォマンスが高いので梅をたのむべしと云うアドバイスなどは実際に役にたつ。
友里氏によると、行くべきでない悪い店はメディアの露出が多く次々と支店を出す店、丸の内や六本木の再開発地区の賃料の高いビルに出店した店だそうで、反対に良い店は支店を出さない店、そこそこの立地条件の店、そして何より主人(シェフ)が目の届く範囲で陣頭指揮する店だと云う。今後のレストラン選びに参考にしてみよう。
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