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2009年12月 3日 (木)

秘伝のタレ

新しいPCを持って神戸に出張の夜は、海岸通りに程近い最近評判の神戸ステーキ店に現地の人と一緒に入った。この辺りは震災後、見違えるばかりに綺麗になりブティックや有名ブランド店が軒を並べる様になっている。その一角は旧居留地地区などと呼ばれていて、ステーキ屋さんはその街のビルの中にあった。お客は定番とおり目の前に置かれた大きな鉄板で焼かれるステーキを食べるのだが、料理長はこの道30数年とかで、調理と共に彼の神戸牛に関する薀蓄を聞きながら料理を楽しむのである。

調理長のコダワリがひしひしと伝わってくる話を聞きながらステーキを楽しんでいると、たまたま燻製つくりが趣味だと云う我が同僚は、口も段々滑らかになり、鉄板を挟んで調理長と同僚は肉の話題で盛り上がる。料理長は燻製話ついでに、メニューにない自家製のスモークビーフなどをおまけで出してくれたのだが、興にのった我が同僚はこの店の牛コンフィ(漬け汁につけた保存食)の作り方などを聞きたくなった様で、調理長に「秘密だと思うがコンフィの液のポイントなどを教えていただけます?」とおずおずと切り出した。どういう事になるかと聞いていると、これに対する料理長の言や良し、「 全然構いませんよ、お教えしたって僕らはプロですから、手間ひまも設備も違うのでそれは家庭とは違った味を出せるのです 」と躊躇なくノウハウを教えてくれる。こんな事まで教えていいのかなと思うのだが、これを聞いて私は「うーむ、さすがプロ」と感心した。

そういえば最近では、ちょっとした店が ”門外不出の秘伝のたれ”などと看板を掲げていて、客寄せのジョークとしてならまだご愛嬌だが、出来て数年のラーメン屋チェーン店やら焼肉チェーンのタレが、門外不出だの秘伝だのと云うと、へそで茶を沸かす様な気がしてくる。 帝国ホテルでもホテル・オークラでもレストランのレシピーは昔から公開されているが、そう簡単に素人にはホテルと同じ様な本当の味はだせないと自信があるから、平気なのだろう。プロなら時間や設備はもちろんの事、ベースとなる経験や技量が違うのだから、ちょっとした店なら、門外不出などと言わず 「 レシピーは公開ですよ。でも他ではこの味は出せません 」 と言う位の自負をもって欲しいものである。神戸牛の晩は調理長のレシピー話で、料理だけでなくプロの調理人の矜持を見た様で、一層料理が旨く感じたのであった。

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