トラスト・ミー
23日の日経新聞ではコラムニストの田勢康弘氏が「開いたパンドラの箱」と言う題で、オバマ大統領訪日の首脳会談において、鳩山首相が普天間問題に触れ「どうか私を信じてほしい」と言った事について言及している。「トラスト」という英単語を使ったらしいが、首相はその舌の根も渇かぬ翌日に 「 日米合意案を前提にしない 」などと言っている事から、どうも誤ったメッセージを首相はアメリカに伝えたのではないかと田勢氏は危惧している。「もし米国の意に沿わないような結論を考えていたとすると『トラスト・ミー』などというだろうか」と田勢氏は問題点を指摘する。
本当に鳩山首相がオバマ大統領に外交問題で「トラスト・ミー」と言ったとすれば、これはやはりそうとう拙いのではないか、と私も感じるのである。というのは、我々が外国人と交渉する際に相手の責任者が、"TRUST ME" と言えば、普通は「多少の曲折はあっても、相手が納得できる範囲で合意できる、任せなさい 」と言う意味を含んでいるからだ。つまり相手の望む処がかなり理解できて、その想定範囲内に自らも決着できそうな時に"TRUST ME"と言う。逆に今までの合意を前提にせず、最初から日米安全保障条約の経緯を見直すならば"TRUST ME"などとは言わない。
因みにロングマン現代アメリカ英語辞典によれば動詞のTRUSTは "TO BELIEVE THAT SOMEONE IS HONEST AND WILL NOT HARM YOU,CHEAT YOU ETC," とある。またTRUSTは"TO THINK THAT SOMEONE IS LIKELY TO MAKE THE RIGHT DECISIONS" ともあるから、相手が受け入れるはずがない様な提案をする時は"TRUST ME"などとは言わないはずだ。とすると最初から鳩山首相は、自民党政権時代に決まった方針を踏襲する事を、実は腹に決めていてオバマ大統領には「任せなさい」と言ったものの、社民党などに遠慮して翌日180度反対の発言になったのだろうか。そうでなければ田勢氏指摘の様に鳩山首相が日米の認識について「大きな読み違え」をしていて「いったい、どうしようというのだろう」という事になる。
商業英語では、"We trust this information will satisfy your inquiries." とか "We trust our proposition will receive your most careful consideration "などの様に、こちら側の対応を示した後「さあ、これでどうだい」と言う様な時にTRUSTを使う事が多いようだ。「相手はそう思っているかもしれないが、これまでに合意した事が前提なら、新しい検証委員会はいらないだろう」などと鳩山首相の事後会見の様に、相手と丸きり反対の意向を後だし釈明をする際は、 私の知る限りTRUSTを使わない。
私は英語の専門家ではなく永年英語を実務で使っているだけなので、専門家は違う意見があるやもしれないし、私はつたない自分の経験だけで書いているのだが、言葉は要注意だ。スタンフォードを出たとされる鳩山さんは、その辺ちゃんと認識と覚悟を持ってTRUST MEなどと言ったのだろうか心配になる。 WATCH YOUR LANGUAGE !
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