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2009年9月15日 (火)

食糧自給力

伊藤忠商事の会長で政府の経済財政諮問委員会メンバーなどを務めた丹羽宇一郎氏が昨日の日経のインタービュー「 領空侵犯 」で農業の大切さを話し、わが国の農業は大規模化を目指すべし、そのために減反と農業土木に8000億円を投じている予算を次世代農業人材の育成にあてると共に、大規模生産を目指す専業農家に農地を貸し易くし自給力 ( 自給率ではない ) を確保すべしと提言している。

丹羽氏と言えば、田園都市線の遠方から青山まで電車通勤し、社員と同じ食堂で昼食を取るなど清廉な経営者として評判だ。以前、伊藤忠商事の部長さんらに丹羽氏の事を聞いた処、異口同音に 「 それは本当で、とても勉強家です 」と社内の評判もすこぶる良いらしい。 食料畑出身なので農業の事も幅広い知識を持たれているのだろうが、氏の提言にさすがとうなづく。

たまたま最近読んだ宝島新書 「 農協の大罪 」 (山下一仁著)にも日本の農業を衰退させてしまった原因として、政治・官僚・農協のトライアングルよる高米価政策、兼業農家保護政策をあげている。戦後の農地改革で地主の犠牲の上にただ同然で手に入れた農地を、宅地やパチンコ屋に売ってもうけつつ、手厚い保護政策で守られてきたのがこれまでの米作だと云う。本来ならば米作事業主は集約して規模を大きく拡大し、コストを下げる事で自立すべきであって、それにより国際的な農業自由化圧力にも抵抗できたはずであるが、戦後一貫して保守政治・農政がやって来たことは、高米価政策とその結果による減反であると指摘する。そしてこういう農業利権で生きてきたのが農協と政治家なのだが、この産業モデルはもはや機能しないので、農業の担い手も高齢化するばかりと云う。

私が、しばしば疑問に思う事が食料自給率である。飽食のかぎりをつくし日本中のスーパーや食料品店、レストランや家庭から出る膨大な食料の残滓が出るが、そんな食生活を前提にしたカロリー計算って何だろうかと疑問に感ずる。 非常の際に最低限生活に必要な食料が満たされる状態を100とすれば、米を「主食」に据える事が食料安全保障の上で必須だから、農地確保が大切だと思うのだが、現実には減反や耕作放棄地が増えるばかりらしい。国土保全の点からも食の安全の観点からも、農政は転換期に来ているのは明白な様である。民主党になって少しでも農政は変わるのだろうか? 丹羽氏の提言を読んで考えさせられた。

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