青ガエル
渋谷駅の前を通りかかると、懐かしい東横線の5000系車両が展示されている。塗装も美しく内部には昔の写真が展示されていて、夏休みの若者の待ち合わせ場所として賑わっていたが、どうもこの種の鉄道車両を使った展示は、個人的にはあまり好きになれない。鉄道車両は、線路を走って”なんぼ”のものと思っているで、現役を引退した後に、解体されないとしたら、動態保存(いつでも走れる様な状態での保存)されるのが理想である。しかしそれは無理な注文ならば、少なくとも博物館の様な場所で、しっかり管理されていて欲しいと思うのである。
かつて鉄路を驀進したD51やC57の様なSLが、公園の片隅で塗装もはげて錆だらけになり、子供達が泥足でカマの上を駆け回っていたりすると、なぜだかとても惨めな気分になってくる。同様に、かつて子供心に胸を踊らされたスマートな名車5000系が、18.5米の全長もここではカットされて、まるでチョロQの様なぶざまな格好で駅前に佇む。名台車TS301も今はなく、路上でデートの待ち合わせ場所だけになっているのを見るのも複雑な気持ちだ。
昭和29年東急車輛製造で完成したこのデハ5001は、自重28.6トン(従来の3分の2 )張かく構造に、直角カルダンドライブ、当時はやりの湘南型前面2枚ガラスの最新鋭車両であった。当初は3両編成で急行に運用されていたが、私が子供の頃はたしか急行は4両編成で、よく自転車で東横線までこの車両を見に遠征に行ったものである。特に丸子の多摩川鉄橋を渡る際は、丸まった特徴ある緑の車体と、プレス構造の独特なTS301台車のシルエットが遠くからでも一目で判り心を躍らせたものである。
地方の私鉄に移籍して行った5000系も、今やほとんどが解体されたと云うから、ここ渋谷での展示も貴重なものなのだろうが、どこかで動態保存の声などがおきないだろうか。そう言えば九州の肥薩おれんじ鉄道(旧鹿児島本線)では車両オーナーを一口1万円から募っている。生きたマイ車両が鉄路を走るのを見るのは、楽しいかもしれない、駅前のデハ5001を見てそんな気持ちが湧いてきた。
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