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2009年8月14日 (金)

私の履歴書

日経新聞の「私の履歴書」は、人生で「上がり」、世間で言われる処の成功者が一ヶ月に亘って自伝を連載するものである。企業の創業者・経営者・政治家・役人はもとより医者やスポーツ選手、芸術家など各界の著名人が、これまでの半生を回顧する永年続く企画である。

いろいろな分野の多士済々の自伝のなか、企業の経営者の「私の履歴書」は概して面白くない、とは良く言われている処である。確かに企業の優秀な経営者は、その人のたゆまない努力や持って生まれた資質があるにせよ、多分に周囲の引き立てや、巡って来た運などに依ってここまで来た部分が多いはずで、同じサラリーマン出身者としては、読んでいて「自慢高慢、何とかのうち」と言うフレーズが脳裏に浮かんで来る事が多い。ましてや創業者社長や同族企業の社長の成功物語などを読んでいると、「あんたの陰で一体どれだけの人が泣いてきたか」と、却って想像が逞しくなってくるものだ。

その点では、スポーツ選手や芸能人、芸術家の「私の履歴書」の方が読んでいてはるかに面白い。先月の加山雄三の波乱万丈の人生も面白かったが、今月の婦人服デザイナー・芦田淳も面白い。長兄や次兄が帝大出で、3男が早稲田だと家では相手にもされなかった下りなど、戦前の進学・教育に関する世間の本当の見方などが垣間見える。今日の芦田氏が奥さんと婚約する場面の回顧は、この連載では滅多にお目にかかれない男女愛の光景、人間味あふれる記述で共感する。「妹の様に思っていたあの友子が他人のものになってしまう。」「これは絶対に受け入れられない事態だぞ!」と云う芦田氏の思いや決意は、概してひどくあっさりした経済人などの結婚話よりほのぼのとした感じが伝わり、思わず今日の「私の履歴書」は面白いと膝を打つ。

成功の秘訣より、有名人のこういう恋愛物語や、日常の些事の記述の方が余程心に響くのは「私の履歴書」を読んで常々感じている事である。まあ自伝と言うものは、自分の思い出したくないものには目をつぶり、適当に半生を修飾しながら書いているものだろう、とは思いつつも、加山雄三の浮き沈みや芦田氏の純朴な結婚譚を見ると、出勤前の一時、ほっと心がなごみ、朝食の味も美味しくなるというものである。

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