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2009年7月 8日 (水)

高速道路値下げの余波

今治に仕事で行った。最近はあの近辺に出張しても素通りする事が多かったが、今回は仕事の都合で一泊となった。今治で泊まるのは3年振り位だが、この間に町から活気が亡くなった事に驚いた。市の中心部の大丸デパートは閉店、ショッピングセンターもシャッターが閉められていて、朝夕も人通りがまばらである。

今治の主力産業の造船は、好況時の受注残があってまだフル操業、もう一つの産業であるタオル製造も、高級タオルに活路を見出して復活の兆しがあると先般NHKのニュースで聞いたばかりなのに、この衰退ぶりは何だろうか。

タクシーの運転手は、”しまなみ街道”が完成して、車で来た来訪者が寄れる場所だけ賑わっていると云う。クルマ社会から取り残された古い町の典型の様だ。そういえば町の玄関・今治港はかつて芸予諸島各島に向かうフェリーや高速船で賑わったものだが、本四架橋が出来た際にこれらの航路が次々廃止になり、今では数航路が細々と残るのみ。関西や九州を結ぶ長距離フェリーも今回の高速道路値下げがトドメで今治寄港を取りやめたという。海の玄関口の今治港から乗客が減った事も町の雰囲気を閑散とさせている一因かもしれない。

モーダル・シフトだとかエコとか喧伝されながら、政治家の人気取りの為の様に急遽大幅値下げされた高速道路。各道路会社には後から税金で多額の補填があるそうだが、この煽りで経営が成り立たないフェリーや渡船には今のところ何の補助も決定していない。産業の構造が変わって時代の要請に合わない産業が淘汰されるのは、自由主義経済の下、当然の成り行きであろうが、朝令暮改の様な人気取り政治の為に経営難に陥るフェリー業界に同情を禁じえない。

そもそも本州・四国間に需要を大幅に上回る3本もの連絡橋を造り、国民の金でその大赤字の穴埋めをしておいた上に、今回の人気取り大判振る舞いの差額はまた税金で補填すると云う。そのうちあっと気が付いた時は瀬戸内や東京湾などの生活航路やフェリーはもとより、長距離のフェリーも消えているかもしれない。ガソリンの価格が200円以上になる時代も又すぐ来るかもしれないが、その時は後の祭りだろう。

写真は高速道路値下げが最後のパンチになり航路を廃止した、波方・竹原フェリーの桟橋。使われなくなった可動橋だけが寂しく残る。
20090708

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