魚肉ソーセージ
かつてよく食べた何でもない食べ物が、時々妙に懐かしくなる時がある。例えば小学校時代、給食にごく稀に出た味噌汁。当時お味噌汁は、あの世にも不味い脱脂粉乳の代わりのメニューだった。なのでお昼前の空腹時に、調理室の方から味噌汁の匂いが流れてくると、今日は脱脂粉乳ミルクなし、早く昼になれと給食の時間が待ち遠しかったものである。大きな釜で暖めて、清掃に使う様なバケツで味噌汁が運ばれてくると、給食当番の子に、「もっと」 とせがんだ記憶がある。また中学時代、お弁当を持ってこない日は、学校で3ケでセットになったパンを購入する事が出来たのだが、そのセットの中に、一つメロンパンやいちごのパンなど甘いのが入っていた。今でも時々、スーパーでイチゴクリームパンなどを見ると、衝動的に買ってしまう事がある位、子供の頃の食の記憶は強烈なのだろうか。
そういえば、昔の柿の種は唐辛子がまぶしてあって、たいそう辛かったが最近のはそうでない。何でもせんべいの質が良くなったので、唐辛子で刺激を与える事より、じっくり味わって欲しいから、辛くはなくなったとどこかで聞いたのであるが、あのシーハー言いながら食べた柿の種がなぜか懐かしい。こんな事もある。少し前、ドライブをしている際中、あのぱりっとした甘くない昔のトウモロコシが食べたくなって、車を止めた駐車場で、屋台のヤンキー風兄ちゃんに「これ甘いの?」と聞いたら、その兄ちゃん得意そうに「甘いよ~」と言う。「なんだ甘いのか、ぱりっとした奴はないのか」と何とはなく本心を言ったら、その兄ちゃんは喧嘩でも売られれたのかと思ったか、ものすごい顔で睨まれてしまった事がある。人の好みは様々だ。ましてや、最近りんごを食べようと思って皮をむくと、中に蜜などがあると私はうんざりしてしまう。りんごは甘酸っぱいからおいしいのに! 新聞紙に包まれた歩きながら食べるコロッケとか、母親に隠れて飲んだ色素だらけのジュースなども懐かしい。そういえば「前田のクラッカー」は健在だが「渡辺のジュースの素」はとうに見なくなった。
そんな事を考えながら、昨日はスーパーを妻とショッピングしていたら、4本で188円の魚肉ソーセージが売られている。魚肉ソーセージと言えば、学生時代、夜中に腹が減ると、よくごま油で炒めて食べた事を思いだす。毎日運動をしていたから腹が始終減っていたのだろう、なんか当時はいつも食べていた様な気がする。さっそく昨日はその4本セットを買って、風呂上りにごま油で炒めて、冷たいビールできゅっとやったら、久しぶりにチープな味と懐かしさが口一杯に広がった。「至福」という言葉は安売り気味であまり使うのが好きではない、「幸福」で充分の場合が多いと思うのだが、運動して風呂に入って冷たいビールを一気に飲む時だけは、どうあろうと「至福」である。
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