走る○○狂
最近はジョギング用シューズやウエアーもカラフルで機能的なものが出回っているらしい。私はシューズだけは1万円以上の良いものを使っているが、ウエアーについては、物持ちが良くて、穴でも開かない限り使い続けてしまう。なので、なかには知らぬうちに布が伸びていたり、ゴムがゆるくなったりしたものも出てくる。
数年前のある暖かい日、久しぶりにトラックで練習をしようとレース用の短いランニングパンツを持って出たのだが、そのランニングパンツは日頃、妻が「なんだかくたびれていてカッコ悪いから、一緒に走る時に履いたら絶対イヤだ」と毛嫌いしているものであった。その直後の試合の「55歳以上60メートル走」などと云う種目にエントリーしていたので、短い本格的パンツでトラックのダッシュ練習をしておかなければならないと思って、20年くらい使っていたのを持ち出したのだが・・・。
さて千駄ヶ谷の東京都体育館付設の全天候トラックに一人で赴き、ウオームアップもそこそこに、倉庫からスターティングブロックを出して何十年ぶりかにセットする。周囲は高校の陸上部の子供たちがスタートの練習などをしていたのだが、そこは昔とった杵柄、臆する事なくおもむろにブロックのセット位置などを調整したわけである。
で、たまたま高校生のピストルを使ってのスタート練習に合わせて、こちらもスタート練習をしてみようかと思いたち、彼らのマネージャーの「用~意!」と言う声で、私もスターティングブロックに身を屈めた。「バ~ン!」と言う号砲一発、若い子たちと飛び出したのだが、「待てよ、あんまり張り切ってダッシュをすると転んでしまうか、肉離れを起こすか」と言う恐怖が一瞬頭をよぎる。
なので「ここは慎重に加速して」等と必死に五感を働かせながら、30メーター位でそろそろ全力疾走になろうか、というその瞬間である。どうも股間のあたりがひどく涼しい。”ありゃ~りゃ~!?”と思うと、なんとランニングパンツのくたびれたインナーが、ダッシュの勢いで完全に腰の方にずれてしまって、大事なものが露出しているではないか。インナーだけなら良かったのだが、ゴムのゆるんだぼろパンツだ、インナーと共にパンツ全体が横に90度ずれて、腰の切れ込みが前に廻ってしまい遮る布は何もない。完全に丸出しになってしまったらしい。
40数年走っているが前にも後にも、こんな状態で走った事はない、あわてて片手で股間を覆おうと試みるのだが、最高速度になっている時には、そう簡単には身体が動かないものである。そんな時に限って、走路の先には高校生の女子マネージャーがウオッチなどを持って、時間を計っているのである。彼女たちの「ギャー」という軽蔑の叫び声が出ないうちに何とかせにゃならんと、片手で前をおさえつつ必死にブレーキをかけたのだが、全力疾走からの停止までの時間の長かった事。まるでスローモーションの様に景色が流れて行くのであった。
どうやら、彼女たちが気づく前に何とか停止して、廻れ右、いまいましいランニングパンツの向きをやっと直して、なんとか前を隠したのだったが、この時ほど競技場で焦った事はなかった。”トラックのストリーキング”とか”走る露出狂”などと話題になるのははまっぴらだ。 以後、古いパンツでのダッシュだけは二度とやるまい、と心に硬く誓ったのであった。
そんな訳で、走る際は靴も大事だが、ランニングパンツは盲点であったと認識を新たにした。
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