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2009年2月25日 (水)

恐怖のシナリオ

1990年代前半、キッシンジャーがあるテレビ番組で、21世紀の早い段階に米国と中国は太平洋の覇権を巡って戦争に入る、と発言していた。当時の中国の力からすると、その発言は夢の世界だと思っていたが、昨今の経済・軍事分野で中国のプレゼンスを見るに付け、キッシンジャーの予想は核心を突いていたと感じる。

さて、昨年初めから読み始めたハンチントンの 「文明の衝突」 の原書講読もようやく最終段階に入って数ページを残すだけとなった。昨年末のハンチントンの死去も契機になったのか、あちこちの新聞や本に 「文明の衝突」 は引用され、ますます洛陽の紙価を高めている。

さてハンチントンは各文明間の断層線での対立が激化したあげく、2010年にはこんな「最悪のシナリオ」も想定できると、90年代前半に出版された本書で記している。

「2010年台湾と中国は和解に達していて、台湾は事実上の独立を失うことなく、北京の宗主権を認めている。中国は南シナ海の支配権を確立しようとしベトナムと反目するが、次第に紛争がエスカレートし中国はベトナムに侵攻する。ベトナムはアメリカに支援を訴えるもこれに中国が反発、米中が戦争状態に入る。米国内では他国の紛争に巻き込まれる事への国内の反発が強く、厭戦気分が横溢して劣勢になる。窮地の米国は他の西欧諸国の支援を得ようとする。

一方、この戦争を契機に他の文明の主要国が、これまでの秩序・ヘゲモニーを覆す動きにでる。インドは中国が東アジア戦線に関わっているのを機にパキスタンに侵攻。中国とロシア国境でも戦端が開かれる。米国の劣勢を受けてイスラム諸国は反西欧という事で決起する。日本は米国の劣勢を見て中国の覇権に屈して中国側につく。こうして世界は、アメリカ・ヨーロッパ・ロシア・インド連合対中国・日本・イスラム諸国連合の2大陣営で地球規模の大戦になる。」

どうであろうか、台湾と中国との関係、南シナ海や東シナ海での中国の動きを見ていると、少なくとも想定シナリオのごく初期の過程はすでに現実になっている部分もあり、戦慄を感じるのである。

予期せぬ経済混乱で世界中が混乱に陥っている中、中国は機動的な経済政策で各種在庫の調整を進め、日本の素材メーカーも一息らしい(日経新聞2月23日)。中国の需要に依存する海運マーケットは2月初頭から早くも上昇を始めている。中国が今回の経済危機を脱する牽引車にでもなろうなら、国際社会でのプレゼンスが一層上がり・・・・・。

世界八大文明(ハンチントン)の一つの日本文明であるが、今後プレゼンスを増す中国の前進基地として、太平洋地域の中国本土の防波堤の地位になるのか、西欧社会の一員として対中国封じ込めの一環となり、アメリカの不沈空母の役割を果たしていくのか、どちらの陣営により巻き込まれのかの岐路も近い様である。アングロ・サクソンスタイルの略奪的な資本主義もこりごりであるが、さりとて契約の概念のみならず社会道徳や規範が違い、ネポティズム(一族・縁故主義)が社会の原動力になる中国スタイルも真っ平である。

今回、クリントン国務長官が最初にわが国を訪れた事や、オバマ大統領が初めてホワイトハウスに迎える国家首脳が麻生首相であると言うニュースを聞いて、日本を取り巻く地政学的な深謀が米国の新政権の中で胎動しているのだろうか、と思った。

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