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2008年12月 5日 (金)

下流志向


講談社刊、内田 樹(神戸女学院大学教授)著 「下流志向」 と言う本が職場の本棚に数冊置いてあったので、ここ数日で読んでみた。この本は、学ぶ意欲のない子供達、働かない若者たちの問題を取り上げて、今の日本の社会や家族のあり方に警鐘をならしている。

内田によると、今の子供達は小さい頃に家の手伝いなどを通じて、家族が助かって喜ぶとか、自分の存在が役立っているなどの経験をせず、社会との接点では最初から 「消費者」 として出現してくるのだそうだ。もの心つかぬうちから、すべての事を「とりひき」の対象・「損得」の面からしか見ないので、学校に通う事も「何の得があるのだ」という視点でしか捉えていないし、長じて彼らはクレーマーにもなると言うのである。一方で、教育を「対価に対するサービスである」という社会の風潮も、子供の置かれた環境を悪化させている問題であると捉えている。

また内田は、ニートに代表される働く意志のあまりない若者は、自己決定・自己責任という社会の風潮の隘路に生まれた弱者であると言っている。本来、強者は自己責任・自己決定を担保する協力なセーフティ・ネットをあちこちに張りめぐらせているものだが、社会的にこれをもてなかった人達が「自己責任」・「自分探し」などと言う無責任な言葉に踊らされ「働かない若者」になっていると論じている。

強者のセーフティーネットは学閥であったり、親戚や友人とのパイプであったりするのだが、内田は家庭の中に老人や障害者などの弱者や、他人 (お手伝いさん、乳母、書生、職人など) が居たかつての社会の大らかさが、日本では永年セーフティネットとして機能していて、それが崩壊した事が、これら働かぬ若者の出現に影響していると論じている。対策としては日本の社会に、もう一度「家族圏・親密圏」を構築する事が望ましいと提唱する。

会社に置いたあった本なので 「まあ時間つぶし」 位の感じで読んでみたのだが、「下流志向」は、なかなか面白い論文であった。学歴の問題や生まれ育った環境、フェミニズムなどの点も、近頃の本には珍しく大胆な説を展開していて興味深い。

ここに来て、アングロ・サクソン型金融システムの崩壊に端を発し、 「新自由主義」 とか 「ネオ・コン」 に代表される 「自己責任」 的論調に対して、見直しの機運が高まっている。成果主義などもこのまま日本のシステムに定着するとは到底思えない。いま、日本型資本主義の再評価を行う時期が来ているのでは?、などと自分の中でも座標軸を少し見直すべきか、と言う感じがしてきた。

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