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2008年9月16日 (火)

深海のイール

「深海のイール」というミステリーを読み始めたら、はまってしまった。ドイツ人のフランク・シェッツイングが書いたSFの大著。ヨーロッパではダ・ビンチコードを抜いてベストセラーになったとかで、近々映画化も決まっていると云う。日本版はハヤカワ文庫から今年出版されたばかり、なにせ分厚い文庫本で3冊、1500頁もあるから読むのが大変。睡眠時間を削って読んでしまったのでこの処、寝不足に陥ってしまうわ、夢に魚が化けてでてくるわ。

世界中の海で突然異変が起きる。鯨が人間を襲い、原因不明の海難事故が多発する。ロブスターや蟹から新種の伝染病が文明国に広まった上、北海海底ではメタン層をゴカイが食いつくして大規模な海底岩盤の崩落がおこり、これが津波を引き起こし北ヨーロッパの海岸地帯は壊滅的打撃を受ける。

この海の生物の異変に対し、世界中の科学者が結束して対策を練っていくのだが、その中に恋愛あり、陰謀あり、環境保護ありのテンコ盛。少々冗長すぎる箇所もあるが、膨大な科学的知識に圧倒されながら海のなぞ解きに夢中にさせられる趣向だ。

「地球汚染を続けると、そのうち取り返しがつかない事になる」というテーマはさておき、この本に私が惹かれた点は 「人類以外の未知の高等生物が存在したとすれば、我々には認知や理解しえない形で現われる」 というのが小説の基本になっている点で、これは私がUFO特集などをテレビで見る時にいつも感じる考え方と一致する。

仮に地球外に高等生物が存在しても、無限的な宇宙の広がりと時間の中で それがたまたま人類と同時代に存在し、人間が認知しうる形(例えばUFO)で地球にやってくる様な可能性はまずありえない、と私は信じている。逆にこの小説に描かれた様に、いまだほとんど解明されていないこの地球の海に、未知の高等生物が居るという設定は目からウロコ、何となく真実味を感じてしまう。その未知の存在の実態をたね明かしすると、人類の誕生のはるか前より地球に存在し、今も世界で一番繁栄している様々なバクテリアなどの単純な生物「単細胞生物」がそれ(犯人)であったのだが、この単細胞生物が人間が理解できない方法で、地球汚染を続ける人間に意図をもって逆襲する、と言うパラドキシカルな筋立てがユニークだ。

本文中にも書かれているのだが、より高等な生物の存在はそうでないものには理解しえないという認識に対する作者の考察は、バクテリアの集合であってもそれが真の高等生物体ならば、人類の想像を超えた存在として働くに違いないという論理になり、この理解や認識に関する「怖さ」をうまく利用している点が、この作品がヨーロッパではベストセラーになっている由縁であろう。作品中「犬は人間の行動や文明を理解はできず、そこにあるのは権力だけである」という下りがこの小説のキモになっていると思う。本書に引用されている「地球外知的文明の探索とは、我々自身を探す事だ。」というカール・セーガンの言葉が印象的である。

「深海のイール」荒唐無稽なSFではあるが中味の濃いエンターテイメントでもある。映画化が待ち遠しい。

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