天下の悪法
個人情報保護法である。個人の情報が勝手に利用されない様になり、売買された名簿などから迷惑な投資勧誘がなくなったり、詐欺事件などが減ったりする事は大変結構な事だ。しかしこの法の遵守を巡っては、各企業の対応が少々エキセントリックではないだろうか。
おりしもお中元のシーズンだ。社会の潤滑油として、公私問わず節目にそれなりのお礼を送る事は、わが国に広く根づいている習慣と言えよう。問題は人事異動の後の対応。昔は名簿が広く出回っていたから新しくお配りするお中元先の住所も簡単につかめた。が、今はそうはいかない。
贈る本人に「あなたに送りますから住所を教えて」と聞くわけにはいかないから、部下の人に「○○さんのご自宅の住所を教えて貰えないか」と聞くと、必ず「今は、規定でお教えできないです」との返答。「わかってますがなー!」でも何も「投資マンションを買え、壺を買え、先物取引をやれ」という勧誘じゃないよ、毎日電話をしている会社なのは知っているでしょ、人を見てものを言え、何が目的かわかるでしょ、と喉まで出かかる。
仕方なくその会社の中でも、もの事が良く判った古参の数人の女性社員に、部長や役員の住所を聞く事になる。そういう機転の利く人は少なくなってきているから、どうしても限られた数人に、お中元とお歳暮の時期にお世話になってしまうのである。会社の規定で禁止されているのをそーっと教えて貰うからどうしても低姿勢、つい「今度はお礼にワインの美味しい店に連れて行くから」など心にもないリップサービスをつい口走ってしまう。
で結局一人数千円のお中元を手配する為に、その何倍ものお食事代や飲み代をお支払いし、彼女たちに今後の協力をしてもらう事が恒例化するのである。誠に個人情報保護法は天下の悪法である。
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