電気機関車は腰で運転する
昨年11月に碓井峠鉄道文化むらで、かつての峠のシェルパEF63型電気機関車の体験運転をした。架線電圧が1500ボルトから600ボルトに降圧されているものの、先年まで信越本線(このあたりでは碓井線と言うらしい)で活躍していた本物の電気機関車である。一人3万円也(妻と二人で6万円)の受講料を払い、座学や構造の講習を一日受け、試験を受けて晴れて指導員の監督の下で運転が許される。試験をやっとパスした後、初めて自分の手でマスコンのノッチを入れ、ブレーキを操作して108トンあまりの機関車がうなりを上げて前進し始めた時は感動ものだった。
それ以来、鉄道少年だったかつての気持ちが蘇り、最近は電車に乗っても運転台のすぐ後ろ、所謂「かぶりつき」に陣取る事にしている。子供が来ても無視、そこで背中を向けてメールなどしているフトドキ者などいると勿体無いと心の中で憤る。
EF63講習では2系統あるブレーキのエアーを「込める」のと「減圧」するのが難しかったので、電車のかぶりつきでもブレーキエアーの状況を表示する圧力計や回生ブレーキ(発電ブレーキ)の電力を示す電流計に目が行ってしまう。回生ブレーキから通常のブレーキにモードが変る際の各メーターの動作を確認したり、この時感じる僅かなショックの感覚を意識するのは新鮮だ。
最近の電車のブレーキはかなり進んでいて、運転士が一見簡単そうにハンドルを操作すると停止位置にショックもなくピタっと止まる。 (実はあそこまでになるのは相当な訓練と経験がいる事は想像に難くないが・・・)。 これに対し電気機関車は、牽引する列車毎に長さや重さが違い、一編成を貫通するブレーキエアーホースからの若干のエアー漏れなどを勘案してブレーキハンドルを操るそうで、うまい運転士(かつては機関士)とそうでない者で相当の差が出ると云う。昔は登り勾配区間で重い貨物列車が停車すると、うまく列車を引き出せる機関士とそうでない機関士もあったとか。
講習の運転台では「牽引する後部車両のブレーキの効き具合を『腰』で感じながら電気機関車は運転するものだ」という指導運転士の説明が印象的だった。近年開発された最新型の電気機関車では随所に自動化が施されていて、運転も昔より随分易しくなっているらしいが、こういう「匠」の技と体験を直接聞けるのは碓井峠鉄道文化むらならではである。
東海道本線の東京駅から熱海駅まで、客車列車を牽引する電気機関車(電車じゃ駄目)の運転台に添乗したいというのが、人生で一度は体験したい子供の頃からの夢である。
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