黒部峡谷鉄道 トロッコ電車
スリル満点の車窓
飛鳥Ⅱクルーズの翌週は、「人気観光地が目白押し!黒部峡谷トロッコ電車・立山黒部アルペンルート・上高地を1日1か所ずつめぐる充実3日間」の旅に行って来た。このところ毎週毎週遊びで忙しい。今回の旅はJR東日本系の”びゅう”が主催する添乗員付き団体旅行(2泊)である。かねてより一度乗りたいと思っていた黒部のトロッコ電車に乗車し、私にとっては50年ぶりとなるアルペンルートと、40年ぶりの上高地を一挙に効率よく回ってくれる旅という事で参加したものである。旅の初日は、一同25名+添乗員の計26名で東京地区から北陸新幹線に乗り黒部宇奈月温泉駅で下車、観光バスで黒部峡谷鉄道の始発駅・宇奈月駅に行き、黒部峡谷トロッコ電車に乗車する日程である。やって来た宇奈月は富山から伸びる富山地方鉄道の終着駅で、地鉄の宇奈月温泉駅ターミナルに隣接してトロッコ列車の基地が拡がり、その山側に黒部峡谷鉄道の宇奈月駅があった。宇奈月から黒部川の渓谷に沿って上流の欅平までの20.1キロ、大正時代末期から昭和初期~戦前にかけて、電源開発のダム資材輸送のために762ミリのナローゲージで敷設されたのが黒部峡谷鉄道である。同鉄道は1953年に地方鉄道の免許を得て観光輸送にも乗り出し、冬季以外に運転されるトロッコ列車が有名になったが、鉄路はまだ資材の輸送にも使われており、会社は関西電力の完全子会社になっている。
1時間に1本ほどの間隔で運転されるトロッコ電車(本当は電気機関車牽引なのでトロッコ列車というべきだが、同鉄道のホームページには「トロッコ電車」とあるためここでも電車とする)は、直流600ボルトの動力源によって運転される。ここでは主に日立製作所製のEDR型と呼ばれる全長7米弱の直流電気機関車により、10両余り(乗客の波動で客車の編成両数は変化するようだ)の客車が牽引されて渓谷に沿った鉄路を登り下りしている。重連総括制御の電気機関車は抑速にエアの他に発電ブレーキを使用、常に列車の先頭に立つプル牽引運転で、標高223米の宇奈月駅から599米の欅平まで、アプト式などではなく粘着方式の運転である。主力のEDR型の他に、粘着性能に優れたインバータ制御・交流モーターのEDV型という新鋭機関車(川重製)もあり、こちらは回生ブレーキを装備しているとのこと。いずれの機関車も台車には空転防止対策のとても大きな砂まき装置が目立つ。客車はオープンタイプのトロッコ車両と、客席がエンクローズされるリラックス客車(こちらは追加料金が必要)の2種類があり、定員は1両20名~30名、いずれも全長は7米強のボギー車両でアルナ工機製であった。編成後尾はボハフ呼ばれる客車で、多分ボはボギー車、ハは普通車、フは手ブレーキ装着を指していると思われ、最後尾には車掌が乗務している。アルナ工機と云えば路面電車の製造が得意であり、かつ関西私鉄の雄である阪急電鉄の子会社であることを考えると、こちら関西電力の完全子会社でナローゲージ鉄道の車両にはアルナ工機製が打ってつけという感じもする。全線単線の運転だが、安全を担保する信号系統は、ATSのようなシステムが構築されているようで、軌道内には地上子が置かれていた。
この鉄道は、旧国鉄の東京起点による列車分類方法を踏襲しているらしく、終点の欅平に登るのが下り列車、起点の宇奈月に下るのが上り列車となっているのが面白い。トロッコ車両に乗車して宇奈月駅を出発すると、車内は地元富山県出身の女優室井滋さんの解説放送が流れ、沿線の様子や鉄道の沿革が分かるようになっていた。黒部峡谷のV字谷に沿って山あり谷ありダムありで、トンネルや橋梁の連続する線路の周囲は、インディジョーンズの映画に出てくるかのスリル溢れる光景が展開する。急カーブの度に車輪とレールの擦れる”キーキー”という摩擦音を派手に響かせつつ、「電車」は最高でも時速25キロ程度で急峻な崖沿いにゆったりと走った。乗車して約1時間、我々”びゅう”団体客は、なぜか終点の欅平まで行かず、2.6キロ手前の鐘釣駅で下車して、黒部川対岸の万年雪の雪渓を眺め、河原の露天風呂付近を散策したが、見るとクラツーなど他の団体も皆ここで降りている。多分終点の欅平まで行くと時間がかかるので、日程管理のために団体客は皆がここで折り返すことになっているようだ。どうせなら終点まで行ってみたいところだが、このあたりが自由の効かない団体旅行の辛いところである。鉄オタの為に、本鉄道に関するより詳しい技術的な資料や展示、説明パンフレットが欲しかったが、そんな客はごく少数だろうからこれまた仕方がない。釣鐘駅より「下りの上り列車」で宇奈月まで戻ってくると総時間は4時間余り、冒険心が刺激される峡谷鉄道の旅であった。天気も順調でこうして旅が始まった。
最新の電機EDV型と途中駅で列車交換
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